ボールといつも一緒。日が暮れて暗くなっても蹴っている。眠るときですら枕元に置いて。サッカーに心奪われ、ひたすらうまくなりたいと片時もボールを離さない。そんな子どもを周囲は「サッカー小僧」と呼ぶ

▼J2アルビレックス新潟で現役を引退した39歳のフォワード、田中達也選手もそんな子だったのだろう。度重なるけがで最近は試合出場が少なかった。それでも真摯(しんし)に練習に打ち込み、背中で周囲を引っ張った

▼今季最終戦が最後の試合となった。全力で駆け回りゴールに迫った。途中交代する際には、相手チームや審判も含めピッチ上に花道をつくった。異例の光景だった。サッカーに携わる人々から、どれだけ敬意を集めていたかが分かる

▼J1浦和でプロデビューし、群を抜くスピードで日本代表に名を連ねたこともある。しかし大けがに見舞われ、2013年に新天地に選んだのが新潟だった。肉体改造に取り組み、選手生命の危機を乗り越えた。それだけでも特筆すべきなのに、移籍後9年間も現役を続けるとは誰が想像しただろう

▼〈おお達也 オレンジと青の おお達也 俺たちの達也〉。引退セレモニーでは、録音されたサポーターの歌声が流れた。「(新潟のチームカラーの)オレンジのユニホームで引退できることは誇り」と涙を見せた

▼セレモニーが終わり、ほかの選手が引き揚げた後も、ピッチに残って娘や息子とボールを蹴っていた。永遠のサッカー小僧。今後の人生もボールとともにあるのだろう。