リトアニアは人口270万人ほどの欧州の小国だ。ポーランドやロシアに囲まれ、昔から命運を大国に左右されてきた。先の大戦では日本領事館の杉原千畝が、ナチス・ドイツから逃れるユダヤ人に「命のビザ」を発給し続けたことでも知られる

▼「親友とけんかをすれば、蜜を得られない」。養蜂が盛んなこの地ならではのことわざだ。リトアニア語で「親友」は「蜜蜂」の派生語という。かつて蜜蜂の巣を見つけると、親しい人に場所を教え共有した

▼蜂は村境も国境も自由に越えて花を巡る。だから養蜂は独りではできない。情報を共有し心許せる相棒あっての仕事だ。身勝手の危うさを肌身で知る。ことわざは、そんなお国柄ならではのものだろう

▼いまこの小国が民主主義の象徴として注目を集める。中国のウイグル族への弾圧に反対し、台湾と代表機関の相互設置に動く。ロシアのウクライナ侵攻の動きにも警鐘を鳴らす

▼きょう9日と10日、米国の呼びかけで「民主主義サミット」がオンラインで開かれる。リトアニアや台湾を含む民主体制の約110カ国・地域が招かれた。専制国家とされた中国やロシアは分断行為だと猛反発している

▼10日の世界人権デーに合わせ、世界の差別や人権問題の改善策を探ることは大切だ。ただ民主主義の原点は反対派の存在を認め議論を尽くすこと。核軍縮も温暖化対策も全世界の協力なくして実現できない。互いに蜜蜂を囲い込み、それ以外を敵視するだけでは「蜜」など望みようもない。