健康食品の広告に目が行くようになった。健診ではいくつもの項目でひっかかる。半世紀も生きれば不具合なしという人はまれだ。機械の部品と同様に、人体も歳月を経ればトラブルを抱えがちになると思い知る

▼人生100年時代と言われて久しい。ベストセラーには毎週、老いがテーマの本が並ぶ。加齢とどう向き合うかは、誰にとっても大きな命題だ

▼90歳を超えて大往生した大叔父は、退職後もぱりっとした服装にエプロン姿で家事をはつらつとこなしていた。理想的な老後に見えたが、「友達が誰もいなくなってつまらない」とぼやいていた。長生きは友人がみな世を去っていく寂しさも伴うのか

▼本紙読者文芸選者の歌人、馬場あき子さん(93)が全歌集を出した。75年の歌業を「多くの人をみとり、挽歌を作ってきた」と振り返る。歌とともに年譜をたどると、家族や師、仲間ら多くの訃報が記されている

▼実は全歌集には直近の作品は収められていない。収録するのは、2017年に急逝した夫、岩田正さんと一緒にいたころの作品までにしたかったという。人生の喜びの中には、人との関わりがもたらすものも多い。大叔父の言葉を思い出す

▼寂しいこともあるだろうが、老いの季節は人生の集大成の時期。少しでも豊かな時間を過ごしたい。イラストレーターみうらじゅんさんの造語に「老いるショック」がある。老いを笑い飛ばしてやろうという気概を感じる。年を取ったと感じた時、このフレーズを口に出してみようか。

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