水俣病被害者らが支援を呼び掛けた署名活動=10日、新潟市中央区
水俣病被害者らが支援を呼び掛けた署名活動=10日、新潟市中央区

 新潟水俣病第5次訴訟が新潟地裁に提訴されてから、11日で8年となった。症状が水俣病かどうかが争点となり、原告側は高齢化する被害者を社会的にどう救うのか考えるべきだと訴え、早期結審を求める。地裁は最短で2年後に結審する審理日程案を提示したが、被告側は難色を示し判決までの道筋は不透明だ。

 原告の平均年齢は73歳となり、最近の口頭弁論で原告側からは、地裁に早期判決を求める意見陳述が目立つようになった。

 10日は原告らが新潟市中央区の古町十字路で署名活動を実施し、支援を呼び掛けた。11月には原告や患者団体などが、原因企業の昭和電工(東京)と独自交渉し、早期結審を国にも働きかけるよう求めた。

 提訴から先頭に立つ原告団長の皆川栄一さん(78)=阿賀町=は、長引く裁判に「この先も闘っていけるか不安」と漏らす。

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 結審が見えない背景には、どういう症状を水俣病と判断するのかを巡る「医学論争」がある。

 原告側は、汚染された阿賀野川の魚を知らずに多食し、手足のしびれなど水俣病特有の症状があると主張。総合的判断で広く患者認定できるとした最高裁判決に沿って判断するべきだと訴える。

 被告側は、川魚を食べた客観的証拠を求め、原告らは複数症状の組み合わせという国の患者認定の基準に満たないと主張。原告主治医の診断が神経学の知見に反し、誤診の可能性があると反論している。

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 地裁は11月、結審時期を23年9月~25年9月とする三つの日程案を示した。双方の主張がそろった原告から判決を下す「分離判決」を前提にした案もある。

 ただ、被告側は分離判決には後ろ向きで、地裁は双方の意見を聞き、来春までに日程を固める方向だ。

 原告の川上耕弁護士は「重箱の隅をつつくような医学論争より、社会問題として被害者救済を判断すべきだ」と訴える。

 9月に原告に加わった阿賀野市の男性(66)は「歩くのもつらくなり、今までの生活が送れず情けない。裁判で実情を知ってほしいが、判決はいつになるのか」と声を落とす。

 原告の大堀修さん(71)=新潟市秋葉区=は地裁の審理促進に期待を寄せる。「分離判決でも救済の道筋ができれば、長く苦しむ他の患者も安心できる」

<新潟水俣病第5次訴訟>2013年12月、水俣病被害を訴える新潟市などの男女が、国と原因企業の昭和電工(東京)に損害賠償などを求め、新潟地裁に提訴した。12年に申請が締め切られた水俣病救済特別措置法に基づく救済を受けられなかった人たちが中心で、被害の発生を防げなかったとして国の責任も追及している。現在の原告数は148人。