新潟県内の運転免許証の自主返納件数が、昨年から減少している。2019年は東京・池袋で起きた暴走事故を契機に急増したが、20年は新型コロナウイルスの影響で減少に転じ、今年もその傾向が続く。自粛生活で警察などへの手続きを控えたことや、3密になりにくい移動手段である自動車を手放さなかったことが背景にあるとみられる。県警は「加齢による心身の変化は自分では気付きにくい」として、高齢者に自主返納の検討を呼び掛けている。

 県運転免許センター(聖籠町)によると、免許証の自主返納件数は、高齢者事故の増加や制度の認知度向上により、増加傾向が続いていた。

 19年4月、池袋で高齢者が運転する乗用車が暴走して2人が死亡、9人が重軽傷を負った事故が発生すると、運転に不安を持ち返納に訪れる高齢者が急増。19年の返納件数は18年比20%増の1万323件と、初めて1万件を超えた。

 しかし、20年に入り新型ウイルスが拡大すると、返納件数は減少した。同年4月以降は、全ての月で前年の月を下回って推移。年間件数は9087件と落ち込んだ。21年も10月末までの件数は6854件と、前年同期の7760件をさらに下回っている=グラフ参照=。

 県運転免許センターは「減少に転じたのは、全国に初めて緊急事態宣言が出た時期と重なる」とし、高齢者が手続きのため警察などを訪れることを控えた可能性を指摘。公共交通機関に比べ、3密になりにくい車の利用を続けたいというニーズもあるとみている。

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 一方で、運転操作のミスによる高齢者の交通事故は多発している。

 県内の65歳以上の高齢者による人身事故は、昨年以降、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛を背景に交通事故の総件数が減少したにも関わらず、毎月50件以上発生している。

 新潟市西区では10月、ドラッグストアに買い物に訪れた80代女性の車が出入り口のガラス戸を突き破り、店内に約15メートル進入する事故が発生。同市東区でも11月、70代女性の車がコンビニエンスストアに突っ込む事故があった。いずれもブレーキとアクセルを踏み間違えたとみられている。

 県警は高齢になるほどブレーキの踏み間違えのほか、判断が遅くなる傾向があることなどから、自主返納を検討してほしいとする。

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 国や自治体などは、自主返納の促進に力を入れる。免許返納に伴い申請すると交付される「運転経歴証明書」を利用すれば、各自治体でバスやタクシーの割引などの支援を受けられる。

 警察庁は19年11月、高齢ドライバーやその家族が相談できる窓口、安全運転相談ダイヤル「#8080(ハレバレ)」を開設。県運転免許センターの専用窓口に自動でつながる仕組みで、自主返納に関する悩みや、運転に不安があるドライバーの相談に応じている。

 同センター高齢運転者支援室の高橋清室長は「車社会の地域では家族や社会全体のサポートがなければ、自主返納に二の足を踏んでしまう」と指摘。「返納後の生活に不安があれば、まずは相談してほしい」と、窓口の積極的な活用を呼び掛けている。

◆返納者、公共交通の充実訴え

 運転を不安視し免許証を返納する県内の高齢者からは、公共交通の充実を求める声が上がる。

 11月、免許証を返納するため聖籠町の県運転免許センターを訪れた新発田市の女性(85)は、病院の帰り道に自損事故を起こしてから運転していないという。「パニックになってアクセルから足を離せなかった」と事故を振り返る。

 「人を傷つけてしまってはいけない」と返納を決意。現在は、自宅から片道10キロのかかりつけの病院まで、タクシーで通っている。

 しかし、車の運転をやめてからは多くの不便を感じている。自宅近くにバスは通らず、タクシーに頼らざるを得ない。簡単に生活を変えることは難しく、多くの費用が重くのしかかる。

 女性は免許を返納したくても移動手段がなくてできない人がいるとし、「乗り合いタクシーの導入など、車を持たない人の交通手段を考えてほしい」と訴えた。