来る年がよい年でありますように。ささやかな願いの反映でもあるだろう。年の瀬、いつものぞく書店に、運勢や占いに関連した書籍の特別コーナーができていた

▼テレビの占い番組などメディアで人気を博す占い師の本が並ぶ。年が改まるのに合わせ、タイプ別に更新されているシリーズ本には「努力や苦労が報われる年」「嫌いや苦手から離れることができる年」などの惹句(じゃっく)が躍る

▼運にまつわる言葉に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」がある。プロ野球ヤクルトの日本一で、再び脚光を浴びる野村克也氏の名言として広まった。実際は、剣術の達人だった江戸時代の大名の言葉という

▼「不思議の勝ち」と運に言及する一方、敗北には必ず理由があると戒めることに重きを置いているようだ。厳しい練習を積み、さらに運が味方してくれてこそ結果が出る。勝負を前にした謙虚さが伝わる

▼そんな戒めもどこ吹く風。衆院選で比例復活もできず落選した結果を「勝負は時の運」と片付け、内閣官房参与に就いていた元自民党幹事長氏が辞任した。引き金になったのは代表を務める政治団体が新型ウイルス対策の助成金を受給したことだが、参与就任自体が批判を集めていた

▼元幹事長氏は首相と親しく「お友達人事」「失業対策」と指摘された。比例復活への疑問さえ強い本県民にはどう映ったろう。これでは首相が目指す「信頼と共感を得られる政治」とは程遠い。両氏とも「不思議の負けなし」をかみしめては。

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