大雪時の立ち往生を想定した訓練で、車内の人に支援物資を届けるバギー隊=11月中旬、湯沢町神立
大雪時の立ち往生を想定した訓練で、車内の人に支援物資を届けるバギー隊=11月中旬、湯沢町神立

 大雪によって昨年12月、関越道で大規模な立ち往生が起きたことを踏まえ、東日本高速道路(NEXCO東日本)新潟支社と国土交通省北陸地方整備局は対策を強化し、今冬に臨む。人命最優先の考え方のもと、躊躇(ちゅうちょ)ない通行止めの実施などを盛り込み、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使った情報発信も始めた。立ち往生から1年。専門家は「やるべきことはリストアップされた。自然相手で難しい部分もあり管理者には高度な判断が求められる」と話しており、運用方法が焦点となる。

 関越道では昨年12月16日から、大雪の影響で塩沢石打インターチェンジ(IC)近くなどで大型車が立ち往生し、最大約2100台の車が滞留。解消までに52時間かかった。

 「先行きが見えず、つらかった」。昨年、湯沢町に仕事で向かう途中、33時間にわたって巻き込まれた小千谷市の自営業男性(38)は振り返る。

 入ってくる情報が錯綜(さくそう)し、徐々に疲労が蓄積。食料や寝具を積んでいたが、最寄りのサービスエリアのトイレまで歩いた往復8キロの道のりがこたえた。道路管理者には「再発防止に全力を挙げてほしい」と望む。

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 昨冬の事態を踏まえ、NEXCO東日本新潟支社と北陸地方整備局は、大雪時の対応方針を「できるだけ通行止めにしない」から「人命を最優先に車両滞留を徹底的に回避する」と改めた。立ち往生が予想される場合、高速道とそれに平行する国道を同時に止めることを含め、躊躇なく通行止めを実施するとしている。

 同支社は今冬から「計画的IC閉鎖」と、トラブル発生時の「広域通行止め」を試行する。大雪が予想される時、交通量を減らし、本線の除雪に集中するため、一部のICを事前に閉じるのが計画的IC閉鎖だ。2日前までに日時と区間を決めて周知する。

 広域通行止めは、事故などで車線がふさがった場合、最寄りのIC間よりも広い区間を通行止めにする措置で、さらなるトラブルの拡大を防ぐ。

 除雪体制も増強した。支社管内の4管理事務所あたりの人員体制をそれぞれ、従来の約1・7倍となる500人規模に増員した。

 ハード面では、道路カメラを100台増設して監視体制を強化した。また、中央分離帯で車がUターンできる「開口部」を大型車も使えるように9カ所で拡幅。塩沢石打IC~六日町IC間などののり面5カ所には、一般道への避難階段を設置した。

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 立ち往生が起きた場合の備えも固めた。取り残された車に物資を配布するため、非常食などが入ったセットを千個確保。止まった車列の間を移動できるスノーモービルを操る地元のビークル協会と災害協定を結んだ。11月中旬には、湯沢ICで初の乗員保護訓練も行った。

 ユーザー向けの情報発信では、通行止め予測や高速道の気象予測、道路映像を見ることができるNEXCO東日本新潟支社の公式LINEアカウント=QRコード=を開設した。14日現在の登録数は4132件で、同支社広報課はドライバーに登録を呼び掛ける。

 昨年の立ち往生を受け、同支社が設置した専門家の検討会で座長を務めた長岡技術科学大学の佐野可寸志教授=都市交通=は一連の対策を「実践できれば去年のようなことは起きないのではないか」とみる。一方、通行止めの具体的な判断基準は正確な気象予測が難しいことから「決められるものではない。時々の条件の中でベストな判断をするしかない」と話している。

◆アクセルはゆっくり スタック対応専門家に聞く 

 県内では大雪が降るたびに、タイヤが雪にはまって動けなくなる「スタック」で車が立ち往生するケースが起きている。冬の新潟の路面の特徴と、スタック時の対応について、防災科学技術研究所・雪氷防災研究センター(長岡市)の上石勲センター長に聞いた。

 県内では昨冬、大雪の影響で関越道や北陸道、国道17号などで渋滞が発生した。2016年には、長岡市周辺の複数の幹線道路で長時間の渋滞が起きた。いずれもスタックが引き金の一つになった。

 上石さんによると、同じ雪でも気温によって滑りやすさが変わり、気温が低くなるにつれて滑りにくくなる。地表の温度が0度付近の時の雪は滑りやすい。上石さんは「本県を含む北陸地方は降雪時の気温が0度付近の時が多い。地理的に、滑りやすい環境が生まれやすい」と指摘する。

 スタックした場合、無理にアクセルを踏んでタイヤを空転させると、より深くはまってしまう。まずは慌てずに、スコップでタイヤ周辺の雪を取り除くのが効果的だ。

 脱出時はアクセルをゆっくりと踏む。いったん逆方向に反動をつけてから進むのも有効だ。困っている車がいたら手伝うことも忘れたくない。

 上石さんは「道路管理者、ドライバー双方の対策には限界もある。大雪の時は車を使わないなど、社会全体での行動変容も必要だ」と語った。