街にクリスマスの電飾がともる季節になった。飾られた明かりがいまよりもギラついていた時代があった。バブル経済のころだ。豆電球というよりは、派手なミラーボールが街を照らしていた感がある

▼浮かれ騒ぐ日本に対し、冷たい視線が向けられていた時代でもある。ジャパンマネーが世界を席巻していた。ニューヨークにそびえるビルを買い取った。世界的名画も海を渡ってきた。ゴッホの絵は50億円を超える値で落札され日本へ。「札束に物を言わせる日本」への風当たりは相当強かった

▼先日は15億円という落札額が話題になった。物理学者アインシュタインと研究パートナーによる手書きメモだとされる。54ページあって貴重な計算式が書かれているらしい。景気がいいとも思えぬ昨今、どこの国の誰が支払うのだろう。落札者の名は明かされていない

▼博士のメモは過去にも2億円で落札されたことがある。たった2枚の紙が計2億円だった。東京のホテルに滞在した際、チップ代わりに渡したものだとされる

▼一枚には「意志あるところに道は開ける」とあった。もう一枚には「静かで節度のある生活は、絶え間ない不安に襲われながら成功を追い求めるよりも多くの喜びをもたらしてくれる」とあった

▼意志を貫けと教える一方、成功を追うばかりが人生ではないと説く。経済が長らく足踏みしている現代日本にとっては、どちらの言葉も金言なのかもしれない。メモを落札した人物がいかなる人生を歩んでいるのかが気になる。

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