政府が迷走して自治体を振り回した上、最終的な判断は「丸投げ」する。これではあまりにお粗末だ。

 何を目指す政策か。そこに対する定見の欠如が原因ではないか。生活に直結する制度がぐらついては、国民の不安は増す。岸田文雄首相は厳しく反省するべきだ。

 18歳以下の子どもへの10万円相当の給付を巡り、政府は現金で全額一括給付することを容認する方針へ転換した。

 15日には自治体に指針を通知し、「現金5万円と子育て用品に使えるクーポン5万円」の配布を基本に、「現金10万円一括給付」「現金5万円を先行支給し追加で5万円を給付」を加えた3方式を示した。

 方針が二転三転したために、議会への補正予算案の追加提出が必要になるなど自治体への影響は大きい。もっと早く明確な方針を出すべきだったろう。

 方針転換を受け、本県では全市町村が全額を現金で給付することになった。大半が年内一括給付で調整している。

 当初クーポン配布を考えていた十日町市なども「年内に一括で届けられるに越したことはない」と方針を変えた。

 クーポン支給は事務経費が現金給付の3倍以上に膨らむ。手間もかかり煩雑だ。

 政府は来春の配布を予定したが、自治体にとってはワクチンの3回目接種にも重なる時期だ。クーポンを避けたい思いは理解できる。

 首相は自治体の苦労は謙虚に受け止めるとし、「さまざまな意見を踏まえて制度を柔軟なものにしていった」と述べたが、そもそも立案段階での検討が不十分だったのではないか。

 10万円給付はウイルス禍に対応し、政府が11月19日に決定した経済対策に子育て支援策として盛り込んだものだ。

 5万円を現金で早期給付した上で、残る5万円をクーポンで配布することで、子育て支援と消費喚起を図ろうとした。

 昨年実施した国民全員への10万円給付は大部分が貯蓄に回ったと分析され、消費活性化の効果に疑問の声が上がった。政府がクーポンに固執した背景にはそうしたこともあるだろう。

 だが、結果として国民の心情や現場の実情を分かっていなかったと言わざるを得ない。

 政府は給付に当たり年収960万円の所得制限を設けたが、これについても自治体が独自財源で所得制限を撤廃する場合には容認すると明言している。

 所得制限には「ばらまき」批判をかわす狙いがあり、世帯主の所得で線引きしたが、共働き世帯が主流となる中で妥当かとの見方も根強かった。

 子育て支援が目的なら、全ての子どもに行き渡る恒久的な制度の方がふさわしいと思える。困窮者への経済的支援の要素も持ったことで制度の性格付けが曖昧になったのではないか。

 政府に求めたいのは、国民の目線に立ち丁寧に政策を組み立てることだ。首相はそのために指導力を発揮してもらいたい。