がん患者サポート美容師の斎藤愛さん(右)と、使っていたウィッグを手に乳がん闘病中を振り返る斎藤美鈴さん=長岡市千秋1
がん患者サポート美容師の斎藤愛さん(右)と、使っていたウィッグを手に乳がん闘病中を振り返る斎藤美鈴さん=長岡市千秋1
客から預かったウィッグを手入れする島村剛さん=長岡市南町2

 身近な人や自らががんになった経験のある新潟県長岡市内の美容師が、抗がん剤治療の副作用による脱毛や肌のくすみ、爪の黒ずみなど、容姿の変化に悩む人を支える取り組みを広げている。患者と美容室をつなぐインターネットサイトの開設や、患者専用の「医療美容室」を展開。「髪が抜けても美容室でできることは多い。不安を相談してほしい」と呼び掛けている。(長岡支社・後藤千尋)

 千秋1の美容室「プルメリア」を経営する斎藤愛さん(45)は、県美容業生活衛生同業組合(新潟市中央区)が認定する「がん患者サポート美容師」の一人だ。医療用ウィッグの相談や手入れ、肌や爪のケアに応じている。

 愛さんが患者の支援に関心を持ったのは義理の妹、斎藤美鈴さん(40)の乳がん治療と、自身のがん経験がきっかけだった。

 美鈴さんは4年前、乳がんと診断された。抗がん剤を使うと脱毛するとの説明を病院で受けたが、どう備えたらいいか分からないまま治療を始めた。髪が次々と抜けたため慌てて愛さんや友人の美容師に相談。ウィッグを合わせ、生え際が自然に見えるようにカットしてもらった。

 夏は暑く、冬は静電気に悩み、愛さんに手入れしてもらった。地毛が生えそろうまで約2年間使用したが、身近に美容師がいたので助けられたと感じた。「容姿の変化に不安を感じた時、頼れる美容師がいればありがたい。見た目が整えば前向きになれる」と強調する。

 一方の愛さんは19年、卵巣がんを患った。術後の体調が悪い日もあり、美容師としてできることを考えた時、「病気の治療と同時に、寄り添える美容師が必要ではないか」と思った。

 患者への対応やウィッグの扱い方を本格的に学ぼうと20年2月、同組合が初めて実施した講習を受け、がん患者サポート美容師の認定を受けた。

 サポート美容師には県内の46人が認定されており、患者に対応する美容室も複数ある。パンフレットやステッカーが病院や各店にあるものの、対応できる県内の美容室を手軽に探せるサービスがなかったため、愛さんはサイトを開設することにした。市の補助金を受け、専門業者と共に制作している。

 サイトはがん患者に対応する美容室のほか、個室の有無や、車いすでも入りやすいかどうかなど、病気や障害のある人の視点で検索できるようにする予定だ。来年の運用開始を目指し、現在は県内の美容室にサイトへの登録を呼び掛けている。

 愛さんは「病気になっても気軽に行ける美容室でありたい」と語る。登録の問い合わせはプルメリア、plumeria868138@gmail.com

◆心の苦痛も和らげる
医療美容室を開く島村さん(長岡市)

 長岡市の美容師島村剛さん(40)は、病気で髪を失った人を完全予約制で受ける医療美容室「アソラ」を南町2で開く。ウィッグの相談やメンテナンス、髪が生え始めた時の頭皮マッサージや地毛のケアなどを行う。

 がん患者だけでなく脱毛症や抜毛症などで悩む人が、市内外から訪れる。島村さんは「心の底から喜んでもらえた時、やって良かったと感じる」と話す。

 医療美容とは、病気やけがによる容姿の問題から起こる精神的な苦痛を、和らげるための美容技術。普及に取り組む「ランブス医療美容認定協会」(神戸市)が掲げている。

 島村さんは抗がん剤治療をした同級生から相談を受けたのをきっかけに18年、ケア方法を学ぼうと同協会の研修を受けた。医療美容師の資格や、心理セラピストの資格などを取得し、19年2月に医療美容室の認定を受けた。

 協会が認定する医療美容室はアソラを含め県内に5店あるが、医療美容の指導者はおらず、島村さんは講師を目指し勉強している。10月からオンラインでの指導に参加している。島村さんは「ウィッグを手放せない生活を送る人の役に立ちたい」と語る。