
最後の1周に入る服部。苦しさから逃げ出したいと思う自分と闘っていた
30キロ地点で61位。以降、服部勇馬は自分と対話しながら走っていた。
《完走しないといけない。完走しないと》
《かっこ悪いなー。惨めだな》
《もうやめたい…。でも、やめていいのか?》
意識だけは切らさないようにしていたからか、さまざまに自問自答した。そのうち、氷入りのビニール袋を持つ手がつり始めた。無理を続ける体が上げた、小さな悲鳴だった。
レースは最後の小ループ1周に入る。ビル街を服部が過ぎて…
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