県内26基のうち、糸魚川市には半数近い12基が集まる。国土地理院に登録されている「自然災害伝承碑」の数である。糸魚川が、いかに自然災害に苦しめられてきたかを物語っている

▼県内の伝承碑には、新潟地震、中越地震といった地震災害もあるが、糸魚川で目立つのは雪崩や地滑り、土石流だ。険しい地形に囲まれた狭い平地で、人々は肩を寄せ合うように暮らしてきた。そんな集落を、たびたび白魔や濁流が襲った

▼糸魚川にある碑で最も犠牲者が多かったのは1922年の勝山(かつやま)大雪崩だ。旧北陸本線の除雪作業員ら200人が乗った列車を雪崩が直撃し、90人が亡くなった。国土地理院の説明には「国内の雪崩による鉄道事故としては史上最大の惨事」とある

▼96年12月に長野県境で発生し、糸魚川市の女性3人を含む14人が死亡した蒲原沢(がまはらざわ)土石流の慰霊碑も、伝承碑の一つだ。碑文には「融雪を考慮した土石流発生の予知・予測手法の開発等が必要である」との教訓が刻まれている

▼22日で発生から丸5年となった糸魚川大火は死者がいなかったこともあり、伝承碑には登録されていない。飲食店から出た火が強風にあおられて燃え広がった。出火の原因は不注意による失火だが、延焼は自然災害の風害に当たるとして被災者生活再建支援法の適用対象になった

▼糸魚川は透き通った青い海と高い山が隣り合う風光明媚(めいび)な地である。自然が豊かなだけに、災害とは常に背中合わせだ。慰霊碑が、これ以上増えないことを祈っている。

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