モデル事業で一般住宅に取り付けられたアンカー。雪下ろし作業中の屋根からの転落を防ぐ=長岡市東中野俣(撮影は長岡支社・佐藤将志)
モデル事業で一般住宅に取り付けられたアンカー。雪下ろし作業中の屋根からの転落を防ぐ=長岡市東中野俣(撮影は長岡支社・佐藤将志)

 豪雪地の新潟県では毎年、雪下ろし作業中の転落事故が相次ぐ。悲惨な事故を食い止めようと、長岡技術科学大学の教授や防災に取り組む団体でつくる「命綱アンカー普及推進協議会」(長岡市)が、屋根上で命綱を固定する器具「アンカー」を住宅に取り付けるモデル事業を長岡市栃尾地域で始めた。一般向けの見学会や雪下ろしの講習会で安全な作業を体験してもらい、普及を加速させたい考えだ。(長岡支社・永井竜生)

 今月14日、栃尾地域の住宅で、アンカーの取り付け作業が行われていた。アンカーは屋根に取り付ける金具で、命綱を留めて落下を防ぐ。

 地元の島久工業(谷内2)の職人が作業に当たり、屋根の端付近の金具に黄色い目印を付け、少し先からは屋根がないことを示した。取り付け作業は2時間ほどで終わった。

 本格的な冬を前に、アンカーを取り付けてもらった60代の会社員男性は「頑丈そうで頼もしい。使い勝手を確かめたい」と期待する。

 アンカーの取り付けは、長岡技科大の上村靖司教授(55)、中越防災フロンティアと中越防災安全推進機構が設立した普及推進協議会が手掛けるモデル事業の第1弾。栃尾地域でも特に雪が多い東中野俣地区の3軒に設置の協力を依頼した。アンカーを実際に見たり、試したりできる場所とし、普及を加速させる狙いがある。

 県によると、大雪だった昨冬は県内で少なくとも9人が雪下ろし中に住宅や車庫の屋根から転落して亡くなった。

 今年8月に県が公表した雪下ろしの安全確保に関するアンケートで、アンカーについて尋ねたところ、回答者約190人のうち67%が知っていると答えた一方、実際に自宅に設置している人は7%にとどまった。設置していない人に理由を聞くと、52%が費用面を課題に挙げた。

 これまで普及に向けては10万~20万円が相場とされる設置費用がネックだったが、補助制度を設ける県内自治体が増加。本年度は13市町村が5万~15万円を補助しており、設置を後押しする機運が高まっている。

 本年度の申請は魚沼市が37件、十日町市が27件といずれも過去最多となった。本年度から制度を創設した長岡市では46件、小千谷市と南魚沼市でもそれぞれ10件を補助した。

 長年、雪下ろし中の転落防止に取り組んできた上村教授は「普及に向けた条件は整ってきた。補助金制度の浸透とアンカーの製品開発が進めば、設置のハードルは下がって普及が進んでいく」とみる。

 補助制度が拡充される中、今後はアンカーの効果をどう実感してもらうかが鍵となりそうだ。

 今冬始まった協議会のモデル事業では、アンカー設置に協力してもらった家で、住民向けの見学会や、雪下ろしボランティアの講習会を通したアンカー体験会を計画している。

 上村教授は「アンカーがあれば安全だという経験を多くの人に体験してもらえる現場ができた。数年以内には県内の他の場所にも広げ、設置を波及させたい」と話している。