日下智晴氏
日下智晴氏

 第四銀行と北越銀行が合併し、1月1日に第四北越銀行(新潟市中央区)が発足して間もなく1年になる。

 帝国データバンクによると、第四北越銀をメインバンクとする企業は10月時点で1万7993社。全国の銀行中9位となった。県内シェアは56・5%に達している。

 圧倒的な存在となった第四北越銀は「地域創生」を掲げ、4月に殖栗(うえぐり)道郎頭取(59)が就任した。

 従業員数は9月末時点で3415人。約200店舗を約150カ所に集約する計画は、これまでに21店舗を近隣店舗へ移すなど順調に進んでいる。一方、行風が異なる旧2行の合併で、組織の融和にはしばらく時間がかかりそうだ。

 人口減少や新型コロナウイルス禍などで県経済の現状は厳しい。合併で経営基盤を強化した第四北越銀の貢献が期待されている。

◆県経済けん引する計画を
前金融庁地域金融企画室長・日下智晴氏

 人口減少などを背景に経営統合といった地銀再編の動きが全国的に相次いでいる。本県ではその先駆けとして第四、北越両行が2018年に経営統合して持ち株会社「第四北越フィナンシャルグループ(FG)」を設立、21年1月に合併して第四北越銀行(新潟市中央区)となった。合併が地域の発展にどう結びつくのか、今後の動向が注目されている。地銀出身で金融庁地域金融企画室長として地域金融改革を担った日下智晴氏(60)=広島県在住=に銀行合併の意義や課題を聞いた。(報道部・貝瀬拓弥)

 -第四、北越両行の合併をどう評価していますか。

 「規制緩和で銀行業以外の業務を展開できるようになったことや、(同一地域の地銀の合併に独禁法を適用しない)特例法を背景に全国で金融機関の再編が起きている。第四、北越はこうした時代を予測して最初に動いた銀行であるのは間違いない」

 「持ち株会社をつくるだけでなく、傘下の銀行を合併させたのも評価されていい。全国では持ち株会社に複数の銀行をぶら下げるケースが多いが、これでは機能を発揮することは難しい。長い目で見れば当然、合併した方がいい」

 -第四北越銀行が発足した後はどうでしょうか。

 「4月に公表されたFGの中期経営計画を見て驚いた。何も書いていない。全国どこでも変わらないような当たり障りのないことばかりだ。新潟県経済のエコシステム(生態系)をどうつくっていくのかを書いてほしい。第四北越は人材の質が高く、考えてはいるはずだ。なぜ外に出さないのか分からない」

 -どんなことを示すべきなのでしょうか。

 「南都銀行(奈良)は、県内総生産の増加を経営目標に据え、そのために拡大を目指す業種を経営計画に書いている。第四と北越に分かれていた時は県経済への責任が曖昧だったが、一緒になったからこそ、新潟県固有の状況を踏まえてもっと踏み込んだ計画を示してほしい」

 -合併の効果やデメリットはどう見ますか。

 「デメリットは中小企業へのケアがおろそかになることが考えられるが、新潟県は信金信組がきわめて優秀なので顕在化しにくい。効果は何を物差しに測るかだ。第四北越FGの売り上げ増やコスト削減といった効果は、僕から言わせると、どうでもいい。取引先企業の売り上げがどれだけ伸びたかなど顧客が受けるメリットで評価すべきだ」

 -他県ではどんな動きがありますか。

 「合併で融資に伴うリスクの許容量は大きくなる。昨年10月に地銀2行が合併して十八親和銀行となった長崎県では、サッカースタジアムを核にした数百億円規模の再開発事業が進んでいる。新潟県にはそうしたものが見えない。県の経済規模からしても、地銀が裏に入ってビッグプロジェクトが出てきていい。佐渡汽船を巻き込んで佐渡観光の大きな仕掛けをするとか、ぜひやってほしい」

◎日下智晴(さか・ともはる)神戸大卒。1984年広島銀行に入行、融資企画部長など歴任。15年に金融庁へ転じ初代の地域金融企画室長などを務め、21年9月に定年退職。10月から日下企業経営相談所代表。広島県出身。