新型コロナウイルスの流行下で2回目の正月を迎えた。

 新たな変異株への用心を怠らないようにし、ウイルス対策に万全を期すのはもちろんだ。同時に、この2年の教訓を生かした新たな社会づくりに取り組みたい。

 多くの人々が分断と格差、貧困に苦しんでいる。ウイルス禍の長期化で細くなってしまった人のつながりを再生する時だ。

 性別や年齢、国籍などにかかわらず、誰もが安心して暮らせる共生社会の実現に向けて、舵(かじ)を切らなければならない。

◆社会のひずみあらわ

 流行が続く中、明らかになったのは、弱い立場の人ほど取り残され、生きづらい社会になっているという現実だった。

 ウイルス禍以前からあった社会のひずみが、表面化した形だ。市場競争中心の新自由主義の弊害が噴出したといえよう。

 企業の終身雇用制は崩れ、家族や地域のつながりも薄くなった。頼れる人の輪は弱っている。

 私たちが立つ足場のもろさを実感させられたのが、この2年だったのではないか。

 問われているのは、人の「弱さ」を大前提にして、支え合っていけるセーフティーネットをどう再構築していくかだ。

 経済効率を最優先する価値観を転換し、他者への思いやりを社会の中心に据えなければならない。

 高齢者や外国籍の人、障害のある人といった不利な立場に置かれがちな人たちの声を、いかに吸い上げるかが鍵になる。

 新たな社会像を考える指標の一つとなるのは、2015年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)だろう。

 健康と福祉、質の高い教育など30年までに各国が達成すべき17分野の行動目標がある。これらを政策にいかに反映させていくか。

 目標のうち、日本が非常に遅れていると指摘されるのがジェンダー(社会的性差)平等の実現だ。

 ウイルス禍で負の影響を受けることの多い女性の視点は社会づくりに欠かせない。選挙候補者の一定数を女性に割り当てるクオータ制導入など、政治分野に女性を増やすことに本腰を入れるべきだ。

◆分断広げないために

 昨年は、先進国と発展途上国の格差が目立った年だった。中でも深刻なのが貧困問題だ。世界銀行はウイルス禍によって、約1億人が貧困に陥ると警告している。

 ウイルス対策で喫緊の課題となっているのが、ワクチン接種を巡る格差の是正だ。

 資本や技術力のある先進国で接種が進む一方で、途上国には十分行き渡らない状態が続く。

 ワクチン接種率が地域的に偏れば、変異株発生のリスクが増す恐れがあると指摘されている。

 住む国が違うだけで貧困にあえぎ、十分な医療ケアも受けられない。こうした状況を看過することはできない。

 日本をはじめ先進国が途上国に対し、資金の拠出やワクチンなどの供給を積極的に行うことが必要だ。世界の分断をこれ以上、広げてはならない。

 自然環境とのつながりをどう取り戻すかも、重要な視点だ。

 環境に多大な負荷をかけながら「成長」を進めてきた結果、地球温暖化に伴う気候変動という危機が世界を覆っている。

 未来を生きる子どもたちのためにも、温室効果ガス削減への取り組みは急務といえよう。

◆足元を見つめ直そう

 ウイルス禍は私たちの生き方そのものにも大きな影響を与えた。自分に一番大事なものは何か。考え続けた人は多いはずだ。

 いま大切なのは、足元を見つめ直すことではないか。性別や国籍にかかわらず、豊かな自然の中で多様な生き方ができる。お互いさまの精神で支え合い、年を取っても暮らしていける。新潟をそんな地域に育てていけないか。

 感染抑制策で広がったテレワークで、職場に縛られない働き方も可能になった。仕事と家庭生活の在り方、ワークライフバランスについて考える好機だ。

 首都圏では、地方移住に関心を持つ人が増えている。受け皿として、本県も魅力を磨きたい。

 少子高齢化の進行と過疎化は、本県にとっても深刻な課題だ。デジタル技術を活用して助け合い、温かな社会づくりを進めていくことは、大きなプラスとなろう。

 新潟日報社は、太平洋戦争さなかの1942年11月に誕生した。今年で創刊80周年(創業145年)となる。新たな社会像を描くためには、平和と民主主義を守ることが大前提だ。

 二度と戦争を起こさないとの思いを新たにするとともに、県民読者と積み重ねてきた「80年の知恵」を生かし、共生社会の実現に力を尽くしたい。

(論説編集委員室長・森沢真理)