ヘッドマークを着けず、往年の姿で走った「SLばんえつ物語」の昨年のラストラン。多くのファンが出発を見守った=12月5日、新潟市秋葉区のJR新津駅
ヘッドマークを着けず、往年の姿で走った「SLばんえつ物語」の昨年のラストラン。多くのファンが出発を見守った=12月5日、新潟市秋葉区のJR新津駅

 鉄道ファンらの間でJR磐越西線の新津-会津若松(福島県)間を走る「SLばんえつ物語」が「2022年以降、運行しないのでは」と危ぶむ声がくすぶっている。JR東日本新潟支社(新潟市中央区)は「運行する方向で検討中」とするが、製造から75年を経た機関車は老朽化し、故障も起きている。モア特取材班が、ファンや沿線の懸念の背景を探った。

 SLの昨年の最終運行日の12月5日、新潟市秋葉区の新津駅には、カメラを手にした鉄道ファンが多く集まっていた。2022年の運行予定を新津駅長に問い掛けるファンの姿も見られた。同区のアルバイト男性(29)は「幼稚園の頃から大好き。SLが走らないなんて考えられない」と継続を願った。

 近年、ファンが不安を募らせる出来事が重なった。最も懸念されるのが老朽化だ。11月には機関車で燃料の石炭を燃やす「火室」に不具合が起き、ディーゼル機関車が代替運転した。18年には車輪が故障し、1年間運行を休止したこともある。今年度は予定されていないが、運行継続には8年に1度、車の車検に当たる大規模検査をクリアする必要がある。新津鉄道資料館(同市秋葉区)の学芸員、岩野邦康さんは、「ボイラーなど、動態保存されているばんえつ物語のようなSLにしかない部品も多い。そうした部品を修理、製造する技術者は年々減少している」と話す。

 さらに、グッズの割引販売など会員特典を設けた「SLばんえつ物語ファンクラブ」が21年度末で終了すると発表されたことも不安に輪をかけた。JR新潟支社広報室は「SLの魅力を知ってもらう一定の役割を果たした」と説明。今後はSNS(会員制交流サイト)を使った情報発信に力を入れるとする。

 県外の状況も影響した。JR東日本盛岡支社(岩手県)が昨年11月、客車老朽化のため、釜石線を走る「SL銀河」の運行を23年春で終えると発表したことを受け、同じJR東日本が運行する「ばんえつ物語」についても憶測が広がった。発着駅の新津駅に近い商店街にも「SLは来年も走りますか」という問い合わせが複数寄せられたという。

 鉄道ファンだけでなく、沿線の住民も動向を見守る。新津商店街協同組合連合会の野本一郎理事長(66)は「『鉄道のまちにいつ』のシンボル。これからも一日でも長く運行してほしい」と願った。

 津川駅(阿賀町)で客待ちをするタクシー運転手の男性(60)は「ここから会津までタクシーを借り切って、SLの撮影をする人もいる」と話す。津川駅でSLを降りて周辺の観光や買い物をする乗客もおり、SLの経済波及効果を感じるという。

 同駅は10月に無人化された。男性は「SLがなくなればなおさら町がさびれる」と先行きを不安視した。


【SLばんえつ物語】1969年に廃車となり新潟市秋葉区の新津第一小の校庭に保存されていた、蒸気機関車C57-180を用いた観光列車。運行開始は99年。現在はJR新津駅-会津若松駅間111キロを約3時間半かけて結んでいる。冬期間を除く土日、祝日を中心に運行し、昨年6月には乗客90万人を達成した。C57-180は1946年の製造。