「E電」という言葉をご存じなのは、いまや鉄道ファンを中心とした一部の方に限られるだろうか。国鉄の分割民営化でJRが誕生したのに合わせ、首都圏の通勤電車を指す「国電」に代わる呼び名として登場した

▼一般公募で集まった約6万の候補の中から、著名人らの選考を経て発表された。「E」は「EASY(気楽な)」や「ENJOY(楽しむ)」の頭文字で、日本語の「いい電車」にも通じる

▼車両のヘッドマークや駅構内の表示に使われたが、利用者の間ではまるっきり定着しなかった。国電も含めて旧国鉄の電車を呼ぶ際は総称の「JR」を使えばよく、多くの人にとってE電はピンとこなかったようだ。今では死語の代表格である

▼こちらの新たな呼称は定着するか。政府は在日米軍駐留経費を「思いやり予算」と言わせずに「同盟強靱(きょうじん)化予算」と呼ぶよう懸命になっているという。米国から過大な負担を押しつけられている印象を払拭(ふっしょく)し、必要な予算とのイメージを浸透させる狙いがあるそうだ

▼日米は先ごろ、2022年度から5年間の駐留経費の日本側負担について合意した。総額は見積もりで1兆円を超える。在日米軍基地がオミクロン株の流行の源になっているような状況も加わって、米国側に気を使いすぎではと言いたくなる

▼一般人からすると新呼称はいかにもピンとこない。死語となる予感が色濃く漂う。それとも、かつて部隊の全滅を「玉砕」と呼んだように、無理やりに言い換えを進めるつもりなのか。

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