母由美子さん(前列左)と父和広さん(同右)や友人から祝福される川崎春香さん=9日、新潟市中央区
母由美子さん(前列左)と父和広さん(同右)や友人から祝福される川崎春香さん=9日、新潟市中央区

 「今まで支えてくれた人たちのおかげでこの日を迎えられた」。全盲で脳性まひなどもあるシンガー・ソングライターの川崎春香さん(20)=新潟市中央区=は9日、新潟市中央区の朱鷺メッセで開かれた成人式に参加した。心ない差別や偏見にさらされ、傷ついたときもあった。乗り越えられたのは家族や音楽の存在があったから。春香さんは晴れの日の喜びを、感謝とともにかみしめた。

 「初めての着物、うれしいな」。晴れ着に身を包んだ春香さんは、はにかみながら両親やお祝いに来てくれた友人と記念撮影した。父和広さん(49)が涙ぐみながら「20年、ここまでよく来たね」と声を掛けると、春香さんは満面の笑みで返した。

 春香さんは体重600グラムで生まれ、生後すぐに失明した。小学校入学前、耳で覚えた「水戸黄門」のテーマ曲をピアノで弾いたのをきっかけに、自ら作詞作曲をするようになった。

 2011年の東日本大震災後には、9歳で被災地を思った歌を制作し、CD発売した。仙台市の音楽祭では「1人じゃない みんなそばにいるよ」と歌い、被災者を勇気づけた。

 中学生になるといじめられ、心ない言葉を掛けられるようになった。長く家に引きこもった。そんなつらい時期を乗り越えるきっかけをくれたのは、母由美子さん(58)と音楽だった。

 由美子さんは「一度きりの人生、もったいないよ」と春香さんに話し、高齢者施設で歌を披露する機会をつくった。

 春香さんは勇気を振り絞って歌った。「すごいね」「頑張ってるね」と声を掛けられ、大きな拍手をもらった。自分を肯定してくれる人たちがいることがうれしかった。

 音楽活動を再開し各地のイベントに参加。多くの音楽仲間もできた。福島県の被災地からも依頼があった。しかし新型コロナウイルス禍でまだ実現していない。「1日でも早く福島の皆さんに歌を届けられる日が来てほしい」と願う。

 脳性まひによる障害が残るため車いすでの生活が続く。今は週3回リハビリに通うが、月に2回は福祉作業所で仕事にも励む。

 成人式では、由美子さんが買ってくれた赤い振り袖をまとい、屈託のない笑顔で夢を語った。「明るく前向きなお母さんみたいな大人になって、いつかはすてきな家庭を持ちたい」(報道部・袖山小百合)