新潟市郊外の田んぼで大型の水鳥の姿を見かけた。暗褐色や灰色の羽毛をまとった姿はオオヒシクイである。ハクチョウと同様に、ロシアから飛来する冬の使者だ

▼国内有数の越冬地として知られる福島潟では、7日時点の飛来数が8800羽で過去最高を記録したと、本紙新潟面が報じていた。今冬はロシア付近が寒波に覆われ南下を促された一方、福島潟周辺は積雪が少なく餌が取りやすくなっていることが要因らしい

▼近年は暖冬の影響で減少傾向が続いていた。2020年度は最も多い時点でも1700羽と過去最低だった。それに比べ今冬はにぎやかだ。都市の近郊で気軽に野生動物の姿を観察できる環境はありがたい

▼田んぼで羽を休め、餌となる落ち穂を探している姿を見ていると、1995年に提起された裁判を思い出した。人間と並んでオオヒシクイが原告になった異例の訴訟である

▼茨城県霞ケ浦周辺の越冬地を高速道路が横断する計画が浮上したのがきっかけだった。住民がオオヒシクイも原告に加え、県知事を相手取って越冬地を鳥獣保護区に指定しないのは違法と主張した。オオヒシクイの訴えは却下され、人間の原告の請求も棄却されたが、野生動物と共生する大切さを見直す機運が高まった

▼オオヒシクイが渡る本県沖には洋上風力発電が計画されている。クリーンエネルギーとして期待を集める一方、渡り鳥が衝突する危険性を指摘する声もある。計画を進めるならば、鳥たちに訴えられないようにしないと。

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