皇位継承をどうするかという本筋に踏み込もうとしない政府の無責任さにはあきれる。

 国会は危機感を共有し、国民が納得できる方向性を出すよう力を尽くすべきだ。

 岸田文雄首相が、安定的な皇位継承策を検討していた政府有識者会議の答申を政府案として国会に報告した。皇室問題の議論の場は与野党協議に移る。

 政府案は、国会が求めた女性・女系天皇の是非などの皇位継承に関する方策は先送りし、皇族数確保策が軸となった。

 上皇さまの天皇退位を実現する特例法成立に合わせ2017年6月に国会で採択された付帯決議は、19年4月の法施行後速やかに安定的な皇位継承策を検討するよう政府に求めていた。

 しかし、有識者会議がまとめた報告書は、皇位継承の議論について「機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化」させるとして棚上げした。

 皇室典範は男系男子が皇位を継ぐと規定しており、次世代の継承資格者といえるのは秋篠宮さまの長男悠仁さま1人だ。

 皇位継承は危機的状況とされている。報告書がそこから目を背けたのは理解に苦しむ。

 政府の主体性のなさも看過できない。

 首相は「報告書を尊重し報告する」と述べる程度で、国会に丸投げした。政府としてどう検討したのか十分な説明もない。これでは国会軽視に等しい。

 皇族数の確保策を巡っては、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する、皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子を皇族とする-の2案を提起した。

 しかし、いずれも皇族数が若干増えるだけで、安定継承にはつながらない。

 法的な課題も多い。

 女性皇族が結婚後も身分を保持する案は、配偶者や子どもは皇族にせず国民とするとしている。憲法が保障する政治や宗教の自由と整合性が保てるのか、識者から疑問の声も出ている。

 皇族の養子縁組については、旧皇族の男系男子だけが特権的に養子の対象になっており、憲法が禁じる「門地による差別」に該当する恐れがある。

 要するに報告書は、皇位継承の論議を避け、皇族数確保に論点をすり替えただけだ。

 背景には、皇位を男系男子にこだわる保守層への配慮があるとみられる。

 懸念されるのは、国会の議論も進展が見通せないことだ。

 野党側は話し合いを促す考えだが、自民党は夏の参院選で争点となれば、国論を二分しかねないとして及び腰だ。

 国会への報告はこれまで男系男子の継承を重視する安倍政権下で先延ばしされてきた。

 皇位継承策は、既に小泉政権時代に議論が尽くされ、この時の有識者会議は女性・女系天皇を容認する報告書をまとめている。国民も女性・女系天皇への賛意が広がっている。

 国会は、さらに先送りすることなくきちんと方向性を示し、国民に問うていくべきだ。