新潟県長岡市や見附市、小千谷市には、古くからの民話が数多く残る。いたずら好きの動物に困らせられたり、人知を超えた存在に感謝の思いを抱いたり。さまざまな逸話の中に、昔の人々の素朴な信仰心や暮らしの知恵が垣間見られる。情報があふれ、何かとせわしない現代。時には先人の心に、静かに思いをはせてみてはどうだろう。記者が物語ゆかりの場所を訪ね、紹介する。(長岡支社・田中信太朗)=7回続きの4回目=

<あらすじ> 小千谷・真人(まっと)地域の若栃集落では江戸時代後期、「真人むじな」が人々を化かして困らせたという。
 「煙が見えたが、火事は起こっていなかった」「葬式の知らせを聞いたが、本人は元気にしていた」。そんないたずらに手を焼いた村人たちは、小千谷代官所に退治を請願。ムジナ(タヌキ)の潜む穴に煙を送り、穴から出てきたところを捕まえる「いぶし作戦」を実行した。
 ただ、ムジナは一向に姿を見せなかった。しばらくすると、穴に送っていた煙が佐渡島から上がっているのが見えた。ムジナは、佐渡まで続く穴を掘って逃走していた。佐渡では、ムジナの大親分「団三郎」になったと伝わる。

 小千谷市...

残り1159文字(全文:1360文字)