新潟県長岡市の立川綜合病院の消化器内科が3月から事実上の休止に追い込まれた背景として、新潟大医学部消化器内科は医局に所属する医師数の減少を挙げている。関係者によると、医局には約200人が所属し、県内約40の病院に150人ほどの医師を派遣しているが、近年は開業や離局で毎年5人以上が医局を離れているという。多くの病院関係者が人事権を握る医局の意向をうかがい声を潜める中、「トップである教授の医局運営が独善的なため、離局者が相次いでいる」とする指摘もある。
新大消化器内科の幹部医師は新潟日報社の取材に対し、立川綜合病院からの医師引き揚げについて「医局も人数が減っている。若い医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)を防ぐ意味もある」と釈明した。
新大医学部関係者によると、同医局では2020年、所属していた医師12人が一斉に開業するなど、近年は開業や離局が増加している。新規の入局者を上回る年もあり、医学部内でも問題視する声が広がっているという。「医局の消化器内科医がバーンアウトしているのは、教授の運営に問題があるためだ」と関係者は指摘する。
この教授を巡っては21年、内科専門医の認定試験を受けようとした若手医師に対し、受験要件となる病院での研修時間を水増しし、不正申告するよう指示したことが日本内科学会への匿名告発で発覚。学会は指導医の資格停止3年という前例のない重い処分を下した経緯がある。
県内のある病院幹部は「消化器内科医をどこに何人派遣するかは、新大医局の支配下にある」と明かす。立川綜合病院は一般病床481床を備える長岡の基幹病院の一つだが、新大医局からの常勤医師の派遣は22年度は実質4人だった。
一方、他の地域の基幹的な病院では10人前後の派遣が多い。立川綜合より小さな300床台でも4、5人の派遣を受けている病院もあるという。
新大消化器内科医局は医師の負担を過大にしないため、ある程度の人数を医局に集約していく必要性があると説明する。ただ、「病床数に対し、立川への派遣数はそもそも少なく、地域医療を守るための配置として明らかにバランスを欠いていた。医師不足だけでは理由が通らない」(県内の消化器内科医)との声も漏れる。
今回の医師引き揚げで、立川綜合、長岡赤十字、長岡中央綜合の3病院で回してきた長岡市の救急輪番受け入れ体制は見直しを迫られる。地域医療や患者への影響は大きい。
多くの病院関係者が派遣打ち切りを恐れ「新大と事を荒立てたくない」と口をつぐむ中、中越地域の医療関係者は「医師を育て、地域医療を守るための大学が、教授の意向一つで地域医療を壊そうとしている」と憤りを隠さなかった。