高田城復元の陳情の紹介議員として、中川幹太市長(右)に予算措置を求める宮越馨市議(左)=1月28日、上越市役所
高田城復元の陳情の紹介議員として、中川幹太市長(右)に予算措置を求める宮越馨市議(左)=1月28日、上越市役所

 新潟県上越市史上、最年少の市長に中川幹太氏(46)が就任し、9日で3カ月となる。市役所や地域自治制度の改革に意欲を燃やし、相次ぎアイデアを打ち出す新市長。だが、市議会の圧倒的多数が野党の状況は変わらず、目指す市職員との信頼関係構築も道半ばだ。混迷の船出となった中川市政の針路を探る。

 「垣根の低い市長になる。皆さんからの意見をどんどんいただきたい」。2日、直江津駅前のホテルで開かれた上越商工会議所青年部との懇談会。中川市長は集まった若手経営者ら約40人に呼び掛けた。

 市長はNPO出身で、地元経済界や政界との人脈は乏しい。この3カ月間、昨年10月の市長選で相手候補を支援した建設業界トップたちと意見交換会を開いたり、自民党国会議員のパーティーに出席したり、関係構築に努めてきた。

 2日の懇談会でも、市長は一人一人と名刺交換して談笑し、親しみやすさをアピールした。

 懇談会を主催した青年部の会長で、建設会社「大島組」の大嶋正寛社長(46)は終了後、「どんな人柄なのか分からず不安もあったが、きょうで距離を縮められた。話しやすそうな人だ」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

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 市政運営の土台を築こうと、人脈づくりを急ぐ市長。その近くで存在感を急速に増しているのが、1993年から上越市長を2期務め、昨年の市長選では中川氏と「政策協定」を結んだ宮越馨市議(80)だ。

 中川市長は年明け早々の1月3日、高田城址(じょうし)公園にほど近い東城町の宮越邸に招かれ、向き合った宮越氏から、4枚の文書を突き付けられた。

 中身は中川市政初の本格予算となる2022年度当初予算案への要望書。「地球環境都市」「子育てするなら上越市」「30万人都市構想」など宮越市政時代に掲げた政策フレーズが並び、宮越氏の3選落選で「未完」に終わった政策など約70項目が並んでいた。

 4時間に及んだ会談に関し、市長は「折に触れて意見交換している」と多くを語らない。

 1月28日に市民団体が要望した高田城の復元も、宮越市政のビジョン「のびやかJプラン」に盛り込まれた宮越氏肝いりの施策だ。市長との面会では元市長自らが司会進行役を務め、「復元の方向を一歩でも半歩でも示す予算編成をお願いしたい」と語気を強めた。

 宮越氏は市長に示した文書を市幹部にも配布し、予算反映という「踏み絵」を迫っている。取材に「政策実現のために協定を結び、応援した。助言を受け入れないなら、関係を考え直さないといけない」と、新人市長をけん制してみせた。

 市長は宮越氏との関係について、「考えが合う部分は反映するが、すべてではない」と是々非々を強調するが、市幹部たちの不安は拭えない。「いつ導火線に火が付き、爆発するか。市長との関係が破綻したとき、どんな政争を仕掛けられるか分からない」

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 注目の22年度当初予算案は今月21日に発表される予定だ。ただ、市議会は市長支持を明言する“与党”議員が1人だけの状況に変化はなく、予算案が原案通り可決されるかどうか予断を許さない。

 来月2日に開会する市議会3月定例会では、市長は当初予算案に加え、いったんは廃止された東京事務所の復活について説明するとしており、新たな争点となる可能性もある。

 議員たちは「また準備不足の施策が出るのではないか」「市長の思いだけでは議論にならない」と身構える。最大会派の一つ「政新クラブ」の栗田英明代表(67)は、「説明不足が繰り返されるようであれば、議会として追及するのは当然だ」と話す。

 新市政の方向性を形づくる当初予算案を無傷で通し、市政運営を軌道に乗せられるかどうか。早くも正念場を迎えている。

◆マイカー通勤に賛否両論

 中川幹太市長は就任以来、通勤に歴代市長が利用していた運転手付きの公用車を使わず、マイカーの軽自動車を運転し、桑取地区の自宅と市役所本庁を行き来している。

 市長は「退庁する夕方以降は公務と関係のない活動もある」と理由を説明。支持者らとの会合など政務の会場に、自らハンドルを握って駆け付けている。

 庁内からは「庶民派の市長らしい」との声も上がる一方で、安全面に加え、災害時など危機管理上の懸念も出ている。

 市長は「豪雪などの時は市役所近くのホテルに泊まればいい」と、今後もマイカー通勤を続ける考えだ。