新型コロナウイルス禍に伴い、アウトドア人気が高まる中、長岡市与板地域のキャンプ場「うまみち森林公園」で昨年、若手の鍛冶職人が「ランタンハンガー」の制作を指導する体験イベントが始まった。記者もおととし夏から近場でキャンプを始めたが、本格的な用具をほとんど持っていない。手作りできるのは楽しそうと挑戦した。

与板は戦国時代から続く「越後与板打刃物」の産地だ。いま公園は冬のため、休園中だが、職人の工房で特別に作らせてもらった。
教えてくれたのは、2020年秋、伝統工芸士の水野清介さん(72)に弟子入りした北海道出身の似鳥(にたどり)透さん(32)。
まずは長さ約1・5メートル、直径9ミリの鉄の棒の先端に、ランタンを掛けるための輪を作る。コークスが赤々と燃える炉に棒を突き刺し、待つこと数十秒。鉄が黄色に光る900度ほどになったら、先端を台に引っ掛け一気に曲げる。硬い鉄とは思えぬほど、ぐにゃりと曲がった。
続いて熱した棒を台の上に置き、金づちで2、3回たたく作業を繰り返し、カーブをつける。衝撃で鉄が曲がる手応えが感じられ、面白い。慎重にしていると、すぐに温度が下がり赤黒く変わった。まさに「鉄は熱いうちに打て」だ。

似鳥さんによると、刃物を作る際は品質にばらつきが出ないよう、たたく温度を一定にするのが重要で、色で温度を見極めるのが難しいという。
つい全力で何度もたたきたくなるが、やり過ぎると棒が必要以上にカーブしたり、ゆがんだりした。その場合は反対側からたたいて微修正する。塗装して、約3時間で完成した。公園で体験する場合は屋外の特設会場で行う。青空の下で作業したら気持ち良いだろうと感じた。
与板の鍛冶職人は昭和初期には100人以上がいたが、現在は10人ほどまでに減っている。危機感を抱いた産地は数年前から後継者育成に取り組み、現在は似鳥さんを含む30代の2人が修業している。似鳥さんは、体験を通じ鍛冶を身近に感じてもらいたいと願う。「自分で使う物を作り、ものづくりの楽しさを知ってほしい」と話している。
(長岡支社・後藤千尋)
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