食料品を買いに行き、手に取った商品が値上がりしたかなと思う機会が増えた。生鮮品もそうだが調味料なども5円、10円と小幅に上がった気がする

▼ためらわずに買い物かごに入れられるのは卵くらいか。茶わん蒸しにオムレツに、和洋問わず主役になる。それでいて、10個入りでも100円玉2枚でおつりがくる。さすがは「物価の優等生」だ

▼考えてみれば不思議だ。この30年を見ても食品は全体的に値上がりしたのに、鶏卵価格はさほど変わっていない。鶏舎や飼料を改良し、生産性を向上した成果という

▼ただそのシステムは世界の潮流とは違う。日本では採卵鶏の9割超が養鶏場の狭いケージで飼育されている。効率は良いが、ニワトリは歩き回ることができない。一方欧米では地面に放して育てる「平飼い」が主流だ。日本は家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の取り組みが遅いと指摘される

▼アニマルウェルフェアが国内で注目されたのは一昨年、元農相が鶏卵業者から賄賂を受け取った汚職事件が浮上してからだ。国際基準に沿うと多額の設備投資を強いられると懸念した業者側の事情が背景にあった

▼汚名返上となるか。農林水産省はアニマルウェルフェアの推進指針を策定し、政府主導で生産者の取り組み改善を後押しする。生産コストが上昇し、販売価格が上がることがあるかもしれない。けれど私たちが生きるためにもらっている命でもある。安さにばかり目を向けてはいられない。

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