ダッシュする妻有ネクサスの3年生。大半が4月から地元高校に進学する=23日、十日町市
ダッシュする妻有ネクサスの3年生。大半が4月から地元高校に進学する=23日、十日町市

 「野球経験者自体が入学生に少なくて…」。そんな嘆きを高校野球指導者から聞くことが増えた。高校野球につながる中学年代の関係者は、止まらぬ「野球離れ」に何を思い、どう立ち向かうのか。本格的な球春到来を前に中学野球の現場を訪ね、変化を追った。(運動部・渡辺伸也)

 雪解けを待たず、練習は熱気を帯びた。3月下旬、十日町市の屋内練習場で白球を追うのは、地域の関係者が昨春立ち上げた軟式クラブ「妻有ネクサス」の中学3年生12人。この1年、学校野球部に所属しつつ、部活以外でもネクサスで鍛えた。水沢中の渡辺真生は「たくさんの同級生と高め合いたかった」と加入の理由を語る。部活で同学年は4人だけだった。

 県中体連軟式野球専門部によると、県内の野球部設置校は、部員不足などにより過去10年で30校ほど減少。2022年春は野球部のある199校のうち、66校が合同チームを組む見通し。十日町・津南地域の加盟12校中、野球部が活動するのは9校。近年、3年生引退後の新人戦は、半数以上の学校が合同チームを余儀なくされている。

 野球人口の減少に加え、関係者の危機感を強めたのが2023年度以降に控える動き。文科省は教員の働き方改革として、休日の運動部活動の段階的な「地域移行」の方向性を示している。

 ネクサス結成は将来に備えての布石だ。部活との「共存共栄」を掲げ、部活以外の空き時間で活動する意欲のある生徒を募集。1年生から3年生まで、想定を越える45人が加入した。

 人数が多いため、普段から試合形式の練習ができた。3年生は部活引退後、クラブチームで出場できる大会に参戦。環境をうらやみ、一度離れた野球を再開する3年生もいた。

 真霜崇監督は、大勢でプレーする生徒の充実した表情が印象的だという。刺激し合い、競技力を高めるためにも、「野球は1チーム20人は欲しい」と確信を強めた。

 県中体連の佐藤勉専門部長=小針中=はネクサスの取り組みを歓迎。専門的な指導者のいる環境を地域の力を得て整えることで、「経験者、初心者双方のニーズに応えやすくなるのでは」とみる。部活中心の現状には「指導力の面で学校によって部活の“サービス”差を感じる生徒や親もいる」とも打ち明ける。

 ネクサスのようなクラブチームは県内各地で結成が進んでいる。民間クラブは学校対抗の全国中学校体育大会(全中)には出場できないが、日本中体連は今後、全ての競技で部活以外のチームにも門戸を開く方向だ。

 一方、スポーツ庁の「運動部活動の地域移行に関する検討会議」で委員を務める長岡市教委学校教育課の石川智雄氏は「心配されるのは勝利や強さばかりを求めた地域の選抜チームが増えること。そうなると学校教育の枠から外れる」と指摘する。地域と学校がどう手を携え、野球熱を保っていくのか。模索は続く。

◆軟式部員数10年で半減

 県中体連軟式野球専門部によると、県内の軟式野球部員数は2021年度が3365人。11年度の6741人から半減した。

 中学硬式は県内で主流の「リトルシニア」が300~400人台で安定。17年度に332人まで減ったが、その後増加に転じた。

 県教育統計によると、県内の男子生徒数は過去10年で約18%減。軟式部員と、硬式選手の大半を占めるリトルシニアを合わせても、少子化を上回るペースで選手が減っている。

 一方、軟式の女子部員は11年度の19人から、21年度は84人まで拡大。佐藤勉専門部長は「女子の選抜チーム『トキガールズ』結成など活動が広がっている。男子を含めた全国大会では今、他県のエースが女子という例もある」と話した。