創業96年の歴史に幕を下ろした三井田金物店。設備や従業員の雇用は鋼進に引き継がれた=柏崎市松美2
創業96年の歴史に幕を下ろした三井田金物店。設備や従業員の雇用は鋼進に引き継がれた=柏崎市松美2
事業承継が成立した三井田金物店の三井田幸一社長(右)と鋼進の神林仁社長=柏崎市東本町1の柏崎信用金庫本店

 創業96年の老舗板金業「三井田金物店」(新潟県柏崎市松美2)が4月、建築資材や工具の販売を手がける「鋼進」(同市藤井)に事業を譲り渡した。後継者不足に悩む三井田金物店と、事業拡大に向けて人材獲得を目指す鋼進を地元の柏崎信用金庫がつないだ。中小企業の多くが跡継ぎの確保に悩む中、事業承継に携わった関係者は「地域の産業や雇用を残す一つのモデルケースにしたい」と話す。

 三井田金物店は1926(大正15)年の創業で、現在の三井田幸一社長(65)で3代目。農機具や家庭用品の販売から始まり、時代とともに建築資材の取り扱いや加工にも事業を広げて歴史を刻んできた。

 だが、近年は家族の独立などに伴い、後継者の不在に直面。三井田社長は「時代の変化が進み、若い人でなければ乗り切れない環境になった。社員6人の雇用と中越沖地震を機に新しくした加工場を引き継いでくれる企業を、薄氷を踏む思いで探していた」と明かす。

 6年ほど前から柏崎信用金庫などに相談していたが、継承先はなかなか見つからなかった。新型コロナウイルス禍の影響もあり、相談は長引いた。

 引受先となったのは、創業71年で社員7人の鋼進だった。神林仁社長(39)は「三井田金物店は歴史があり、板金加工で独自のポテンシャルもある。相談を受けた時は即決に近い形で決めた」と経緯を話す。

 鋼進は住宅の基礎工事などに関連する建築資材や電動工具を扱う一方、三井田金物店は住宅の屋根などに使う板金の加工技術を持つ。神林社長は「事業を引き継ぐことで、建築建設資材や工具に関する需要にワンストップで対応できると考えた」と語る。

 両社と柏崎信金に、信金と提携する東京のコンサルティング会社も加わって、昨秋から事業承継に向けて本格的に協議を開始。板金業にちなみ「プロジェクトゴールド」と銘打ち、限られた関係者のみで外部に漏れないように話し合いを進め、1日付で承継が実現した。三井田金物店の事業と全従業員は鋼進に引き継がれ、三井田社長は顧問の形で鋼進に移った。

 社員13人で新たなスタートを切り、同日には柏崎信金本店で記念セレモニーが開かれた。神林社長は「板金分野は他地域の企業との競争が激しい。承継をスタートに事業を発展させ、地域の雇用も守っていきたい」と力を込めた。三井田社長は「板金の加工技術ではこの地域で唯一のものを持っている。縁の下の力持ちとして神林社長を支えたい」と気持ちを新たにした。

 柏崎信金の小出昭夫理事長は「国内の中小企業の多くで、後継者の不在は課題で、特に地方では深刻化している。今回の事業承継が雇用を守り、柏崎経済を明るく照らすモデルになってほしい」と述べた。

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