ピッチに散る選手たち。J1昇格を目指して激闘を続ける=4月10日、ビッグスワン
ピッチに散る選手たち。J1昇格を目指して激闘を続ける=4月10日、ビッグスワン

 J2アルビレックス新潟は序盤の10試合を終えて6位。J1自動昇格圏の2位と勝ち点2差につけています。今季就任した松橋力蔵監督はどうチームを導こうとしているのか。元週刊サッカーマガジン編集長の平澤大輔さんと新潟日報社編集局のアルビ担当、西巻賢介記者が大いに語ります。(聞き手は新潟日報デジプラ担当・石井英明)

◆ウイルス禍乗り越えての6位、「悪くない」

 -第10節の岡山戦が1-1のドロー。シーズンの4分の1を終え、順位や試合内容をどう見ていますか?

 平澤さん(以下敬称略) おおむね良好ではないかと思います。物足りないところもありますが、新型コロナウイルスの影響で、開幕前のキャンプが10日間ストップ高知キャンプで選手15人を含むチーム関係者18人が新型コロナウイルスに感染。チームは1月17日から28日まで活動を休止した。したことを踏まえれば、うまく回っている。とても楽しく10試合を見させてもらいました。

 西巻記者(同) 同じです。ウイルス禍の中でキャンプを過ごし、すごく難しい序盤戦になると想像していました。でも、第2節大宮戦は2点取られてから2点返してのドローで、「意外と負けないな」と。現在は横浜FCが首位ですが、去年の今頃は新潟が首位。勝敗数は今の横浜FCと同じで、最終的に新潟は6位でした。この先何が起こるか分からないことを踏まえれば、悪くない出だしだと思います。

 
 

 -キャンプ中断の影響は多くのサポーターが心配したと思います。

 平澤 コンディションが上がらないという意味で影響はあったと思います。それでも、僕が想像していたよりはずっと選手の動きが良かった。走れないとか、ミスが多いとか、もっとひどい状態を想像していました。

 西巻 アルベル前監督スペイン出身。旧登録名アルベルト。昨季まで2季新潟を率い、ボールを保持して攻める「ポゼッションサッカー」を浸透させた。今季からJ1FC東京監督。の2年間をうまく生かせたと思います。戦い方の土台はあって、主力の選手もあまりかわらない。一般的に守備の構築には時間がかかりますが、ある選手は「去年からやっているんで」と話していました。

 平澤 初戦はJ1から降格した仙台と0-0。試合を見ていて「新潟強いな」と思いました。ツイッターには「松橋監督のサッカーが分からない」という投稿が散見されたけど、僕はリキさん(松橋監督、以下同じ)がアルベル前監督からのプラスアルファをやろうとしていると感じました。

松橋力蔵監督

 ープラスアルファとは?

 平澤 前の選手に早めにボールをつけることです。後ろで回しながら全体で前進していくスタイルは昨季からのベースにありますよね。それだけでなく、CBの千葉選手や舞行龍選手が相手DFの裏に蹴ったり、逆サイドに飛ばしたりしていた。リズムの変化というか、パスの距離やタイミングが今までと違うなと思いました。もちろん点が取れない、チャンスを作りきれないのは気になりますが。

◆ボランチのプレーが変わった

 西巻 先日の記事に書いたのですが、島田選手は「去年までボランチは横パスしか選択してこなかったけど、今は状況にもよるが、まず遠くを見る」と話していました。ボランチの考え方が変わっている。島田選手のミドルパスが起点となった岡山戦の先制点センターサークル付近から島田選手が左サイドのスペースに浮き球を送る。受け取った本間選手がドリブルで運び、クロス。谷口選手が頭で決めた。など、ああいうシーンがすごく増えています。

MF島田譲

 去年は相手が自陣ゴール前に引くと、その周りでU字のようにボールを回すだけだった。それは選手たちも課題に感じて、打開したかった点でした。今はロングパス一発でも行くし、カウンターも武器だし、セットプレーもある。「ゴールを奪うためならどんな手段でもいい」という感じがします。

 -アルベル前監督は選手個々の役割を決めていたのでしょうか?

 西巻 一定程度はあったと思います。もちろん試合の展開や相手によって違いますが、例えば両サイドのワイドの選手。本間選手や三戸選手ですが、反対サイドにボールがあるときも絶対に張ったままでいる、という約束事がありました。後ろの選手は、ボランチやサイドバックを含め、リスク管理の部分を言われていたようです。これ以上前には上がらない、というような。

 平澤 だから今季は、右サイドバックの(長谷川)巧選手があんなにおしゃれなスルーパス第6節群馬戦。縦への突破を持ち味とする長谷川選手が中に運び、狭いエリアにスルーパス。谷口選手のワンタッチゴールをアシストした。 を通せたんですね。

 西巻 おしゃれでしたね。いい意味で彼らしくないというか。あのプレーについて本人を少しいじったら、「(パスコースが)見えた」みたいなことを言ってました。

 -平澤さんは高選手、島田選手のダブルボランチを高く評価しています。

MF高宇洋

 平澤 すごいことが当たり前すぎて、何も言うことがないぐらいです。高選手は最近、肩に力を入れずにボールを奪うというか、するっと取るシーンが印象的で。もともと相手の足もろともボールを刈り取ることができる選手ですが、今季は軽やかに奪っている。

 島田選手はもう、パスですね。パスの高低、速さ、角度。さまざまに織り交ぜながら出している。見ていて楽しい。僕は左利きマニアなので、余計にですが。

 西巻 左利きマニアなんですか?

 平澤 源流は名波浩元日本代表のMF。磐田などでプレーしたレフティーで、正確無比なパスで名をはせた。08年現役引退。現J3松本監督。です。あの、人を食ったようなパス。彼は昔から「上からピッチが見えている感じ。どこに人がいて、どこが空いているかが分かる」と言っていました。天才だなと。それから左利き推しなんです。

 島田選手は名波に比べるともっとソリッド、直線的なイメージです。鹿島アントラーズ育ちという感じがしますね。島田選手は小笠原満男元日本代表のMF。1998年に鹿島に入り、J1・525試合出場など長くチームの顔として引っ張った。18年現役引退。に憧れていて、僕も小笠原はラブです。 

 続きは…アンカーかダブルボランチか

◎平澤大輔(ひらさわ・だいすけ)1970年生まれ。東京都出身。93年ベースボール・マガジン社入社。この年の自分の誕生日にJリーグが開幕し、「Jの申し子」を自称する。2004~06年、週刊サッカーマガジン編集長。13年から新潟支社に勤務したことをきっかけにアルビにはまる。新潟日報デジタルプラスにコラム「Orange Soul」を掲載中。

◎西巻賢介(にしまき・けんすけ)1982年生まれ。新潟県三条市出身。2006年新潟日報社入社。サッカー・アルビ担当は08年が最初で、昨季から3回目の担当を務める。J1だった2回目までと違いJ2は日程と移動がハードで、「早く昇格したい」と願っている。