赤いテープで区切られた新型ウイルス病棟の患者の元へと昼食を運ぶ看護師。医療用のマスクやガウンを必ず身に着ける=2月16日、新潟市西区の新潟医療センター
赤いテープで区切られた新型ウイルス病棟の患者の元へと昼食を運ぶ看護師。医療用のマスクやガウンを必ず身に着ける=2月16日、新潟市西区の新潟医療センター
新型ウイルス病棟に入る際、マスクなどの防護具を正しく着用できているかを鏡で確認する看護師=2月、新潟市西区の新潟医療センター(看護師撮影の動画から)

 「感染対策は『100引く1は0』。100ある対策のうち一つでも手を抜くと、何もしていないのと同じような結果になり得る」。新潟医療センターで感染対策に当たる認定看護師(39)はそう表現する。昨年2月末、新潟県内で初めて新型ウイルス感染者が確認されてから間もなく1年。陽性者は千人を超えた。県内の最前線では、常に感染が広がるリスクに気を払い、治療に当たる県内の最前線に迫る。

 新潟県厚生連新潟医療センター(新潟市西区)の新型コロナウイルス病棟。廊下の先に赤いテープで区切った「レッドゾーン」と呼ばれる隔離区域の個室に、新型ウイルスに感染した患者が入る。2月中旬、女性看護師(26)はナースステーションから十数歩先のレッドゾーンの手前で、いつものように医療用のマスクやアイシールド、ガウンを着けていった。

 「当初は未知のウイルス。常に緊張していた」。だが、正しい手順で脱着すれば、感染が広がらないと徐々に分かってきた。ただ、密閉度の高い医療用マスクは若干息苦しく、看護服の上に重ね着するガウンは熱がこもりやすい。室温が高ければ汗だくになり、体力が削られる。

 この日の入院患者は4人。昼食をそれぞれの個室に配ったほか、一部の患者に注射を打つなどし、15分ほどで隔離区域から戻った。「いったん入ると出るのも大変。必要なものは何か、ちゃんと考えて入るようにしている」と心掛ける。

 これまで呼吸器、循環器で現場を踏み、現在ウイルス病棟を担当する。病棟では看護師27人が3交代制で切れ目なく対応する。新型ウイルスの患者受け入れが始まった昨年7月以降、60人余りが入院し、当初の想定通りに行かないこともあった。思うように動けないお年寄りの患者にどう対応するか、隔離区域の物品をどう運び出すか。「迷いながらもその都度、解決してきた。過度に怖がらなくなった」。今日も、いつものように境界線をまたぐ。

▽状況が一変

 「患者はなるべく断らない」が信条の新潟医療センター。新型コロナウイルス患者の受け入れを始めた昨年7月からしばらくは、比較的若く無症状や軽症の患者が多かった。

 様相が変わったのは昨年11月だ。新潟市西区の介護老人保健施設でクラスター(感染者集団)が発生した。県からの要請に応じ、初日は2人、2日目4人、3日目2人と、今までにないペースで入院患者を受け入れた。

 さらに12月には医療圏を越え、三条市の特別養護老人ホームからの入院が続いた。1月中旬には用意した15病床のうち13床が埋まった。呼吸器内科部長の栗山英之医師(52)は肌で感じていた。「高齢者が増え、中等症が増えてきた。クラスターが発生すると状況は一変する」

 新型ウイルスによる医療への負担を測る物差しの一つが重症者の人数だ。ただ中等症であっても要介護4や5の寝たきりの高齢者が増えると、看護師らの負担は重さを増す。

 口腔(こうくう)ケアや、たんの吸引は看護師が担うが、患者のマスクをずらすため、飛沫(ひまつ)を浴びるリスクが高まる。

 現場スタッフはジレンマに陥った。感染予防のため病室に入る回数も限られ、それだけ看護も制限せざるを得なくなる。「もっと寄り添いたい気持ちはあるのに」との思いが強まる。

 静かな別れにも直面した。県内では昨年12月に初めて新型ウイルス感染者が亡くなり、23日までに14人が亡くなった。新潟医療センターでも最期を迎えた患者がいた。

 家族であっても患者に寄り添うことはできない。寂しさを埋めるために何とかしてあげたいと、病院はタブレットを導入。「リモート」での面会を勧めた。臨終の場面も画面越しだった。

 現場でリーダーを務める女性看護師(36)は、「患者の様子を丁寧に伝えるなど、家族との懸け橋になるよう心掛けた」と振り返る。

 患者の家族からは感謝の言葉を受け取った。ただ、新型ウイルスの看護に明確な正解はまだないとも思う。「何かもっとできたんじゃないか」ともどかしい。

▽気が抜けない

 収束の見えない感染症は私生活にも影を落とす。

 先の看護師には小学校低学年と保育園児の子どもがいるが、仕事内容を伝えていない。「学校で周囲に伝わり、何げなく言われた一言に子どもが傷つくかもしれない」と案じるからだ。

 入院が途切れなかった時期は病棟のスタッフが一様に暗い夢を見た。「どんなに走っても前に進まなかったり、何かに追われ続けたりする内容でした」

 病院はスタッフの不安を払拭(ふっしょく)するため、希望者向けにPCR検査を実施している。それでも、県内に住む両親に会うことさえ控えるスタッフもいる。

 県内でのワクチン接種が始まったとはいえ、まだ気は抜けない。

 新潟医療センターの吉澤弘久院長(61)は最前線の現場について「モチベーションは保つことができている」としながら思案する。「疲労がたまると、ミスの恐れもある。この感染症はいつまで続くのか」

[新型ウイルス 試練の最前線]<中>防戦

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