阿賀野市にある遊園地、サントピアワールド。新型コロナウイルス()で存続が危ぶまれましたが、インターネットで寄付を(つの)るクラウドファンディングで多くの支援(しえん)を集め、危機を乗り切りました。経営はいまだ厳しいですが、逆境を逆手に取った低予算のユニーク企画(きかく)「ぎりぎりアトラクション!」などで、起死回生を図っています。阿賀野市立水原中学校の3年生で生徒会長の角田龍之介(つのだりゅうのすけ)さんと、生徒会副会長の阿部善志郎(あべぜんしろう)さん、佐藤恋(さとうれん)さんが、サントピアワールドの髙橋修(たかはしおさむ)園長(65)と営業企画部の斉藤武志(さいとうたけし)さん(48)を訪ね、園内を散策。集客のアイデアを出し合いました。

 

地方の楽しい場所に

角田 久しぶりに来ました。小学校の時以来かな。10回以上来たことがあります。

阿部、佐藤 私たちもそのくらい来ています。

斉藤 前身の「安田アイランド」から数えて46年になります。1998年に「サントピアワールド」としてリニューアルオープンしました。磐越(ばんえつ)自動車道ができたばかりで、安田-新潟中央インター間がずらっと渋滞(じゅうたい)したほどにぎわいました。その後、経営が厳しくなり、新型コロナ禍がありましたが、(みな)さんからの寄付に支えられて復活できました。何とか、ぎりぎり生きているという感じです。  
スカイジェットで全長800メートルのコースを空中散歩。進み方はゆっくりだが、「左右に傾いたりするのが怖くて楽しい!」と生徒たち
佐藤 自分が住んでいる市に、こんなに歴史が長い遊園地があるのはすごいなと思うし、うれしいです。

斉藤 いま遊園地はディズニーランドとユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「一人勝ち」という感じですが、地方の遊園地として皆さんの楽しい場所でありたいと思っています。

佐藤 新潟市郊外(こうがい)のショッピングセンターや万代で買い物するのも楽しいけど、私は、子どもに(もど)って思い切りはじけるのを楽しみに、遊園地に行きます。

髙橋 私たち社員がいつも話しているのは、友達同士や家族で一緒(いっしょ)に来たことなど、あったかい思い出を持って帰れる場所を提供できたらいいなって。

角田 小6の時だったか、友達の家族と来て観覧車に乗った時に、高い所は(こわ)くて苦手なんですけど、一番高い所から阿賀野市の水原の方にぽつぽつと光が見えて、すごくきれいな景色だなと思ったのが記憶(きおく)に残っています。

斉藤 上から見ると周りは田んぼしかないですね。安田アイランドの名前の由来、分かりますか? 田植えの時季は一面に水が張られた中に山があって島みたいだ、アイランドだ、となったという説があります。うまくすると、田んぼの水鏡に映る観覧車の写真が()れますよ。
 

 

感染禍 全県から支援

髙橋 2年前に緊急(きんきゅう)事態宣言が出た時は、新型ウイルスの正体が分からないから怖かったんだよね。閉園すれば収入がなくなる。でも会社より人の命だ、と休みにしました。ゴールデンウイークは一番の(かせ)ぎ時なんです。それが飛ぶというのは、企業がなくなることを意味する。何とかしなければと、クラウドファンディングで、ひとまず夏まで存続するのに最低限必要な5000万円を集める目標を立て、達成しました。本当に奇跡(きせき)としか言いようがない。これほど温かい気持ちになり、ありがたさを感じたことはなかった。思い入れのある方々のおかげです。一生忘れないです。
歴代の写真やポスター展示コーナーで説明を聞く中学生。手前は園の模型
阿部 サントピアワールドをなくしちゃいけないという人の思いが集まった。地元から愛されている場所なんだなと改めて思います。

角田 (ぼく)だったら、もう終わりだなと正直、思います。決死の覚悟(かくご)だったと思う。思い出がみんなの心の中にあったので達成できたんですね。

髙橋 全県から支援(しえん)が集まりました。報道の影響(えいきょう)も大きかった。「応援(おうえん)団」と書かれ、お金の入った封筒(ふうとう)をぽんって持ってきて、名前も告げずに帰られた年配のご夫婦もおられました。

 

お金かけずに面白く

斉藤 その貴重な資金をもとに「ぎりぎりアトラクション!」を始めました。メリーゴーラウンドに扇風機(せんぷうき)で思いっきり風を当てて、スピードが上がった気分になってもらうものや、ジェットコースターに乗りながら難しい数学の問題を解くもの、うなぎの蒲焼(かばや)きの(にお)いをお化け屋敷(やしき)充満(じゅうまん)させて、食欲と怖さのせめぎ合いって面白いじゃないか…、そんなのをやっていました。

角田 ノリでやっているんですか?

髙橋 完璧(かんぺき)にノリです。それ以外にないです。というか、お客さまに、存続していますよ、頑張(がんば)っていますよと伝えるには何が一番いいだろうと考えたんです。お金がないので、いかに安くPRできるかと。
「ぎりぎりアトラクション!」のポスター
阿部 そう言われてみると、もともとあるアトラクションにちょっと手を加えただけで、全く別の感じになっているものが多いですね。
 
佐藤 アトラクションに関連性のないものをくっつけているのは面白いなと思います。

髙橋 丸太型のボートで水のコースをたどるアトラクションでは、最後にスタッフがバケツで追い水をかける企画にしました。昨年、豪雨(ごうう)落雷(らくらい)でスプリンクラーが誤作動を起こし、センター内が水浸(みずびた)しになった時に、このバケツをひっくり返したような雨をお客さまにも体験してもらおうと思いついたんです。

阿部 ハプニングから企画が思いつくという、切り()える力がすごいなと思います。

佐藤 ただでさえ、めっちゃ水がかかるアトラクションなのに、さらにって。すごく楽しそう。

 

苦しい時 助け求めて

阿部 さっき、(園内を空中散歩する)スカイジェットに乗りましたけど、左右に(かたむ)いて落ちるんじゃないかという不安があったので、むしろ乗り物を古っぽく加工したり、傾くと「ギーッ」と音を流したりして不安感を増すというのはどうかな。

斉藤 面白いです! うちがやるとリアルだな。

佐藤 ツインドラゴン(大きなブランコのようなアトラクション)が高い位置に上がった時に、ライオンや恐竜(きょうりゅう)の鳴き声を流して怖さを増すのは?

髙橋 全然思いつかなかった。それはいただきます。

角田 大テント劇場の屋根にサントピアのことや水原まつり、産業フェアのポスターをぺたっと()れば宣伝になるんじゃないかな。

髙橋 広告ボード代わりにね。テントを直すのにお金がかかるので、もうちょっとたまるとできるかも。

佐藤 地域の気持ちを受け止めて、ピンチの中でいろいろな案を出して試しているのはすごい。社員の皆さんがお客さんに明るく接していて、ここで働くことに(ほこ)りを持っているように感じられたのもよかったです。自分もすぐにあきらめないで、何とかできないか考えて、努力していこうと思いました。

髙橋 大勢の皆さんに助けていただいた経験から、中高生に伝えたいのは、本当に自分が苦しい時は「助けて」って大きな声で(さけ)ぶこと。自分でやれるところまではぎりぎり頑張る。それでも乗り()えられない(かべ)があったら、助けてって言うのは大事だと思います。それが言えるようになってほしいな。

 

サントピアワールド

 1976年に安田アイランドとして開園。98年、サントピアワールドに。経営が厳しくなり、2011年に民事再生法の適用を申請(しんせい)。再建中に新型コロナウイルス感染拡大の影響(えいきょう)を受け、売り上げが大幅(おおはば)減。20年、クラウドファンディングを実施(じっし)、約5500万円の支援(しえん)を得た。低予算のアイデア企画(きかく)が話題。年間を通じて従事する正社員は約20人。

 

<学校DATA> 阿賀野市立 水原中学校

 昨年度から生徒会が中心になり、水原ロータリークラブやPTA、同窓会などと校舎の中庭を整備するプロジェクトを進めています。校章をイメージした花壇(かだん)や、安田(がわら)のチップを活用した通路は生徒がデザイン。作業を通して親睦(しんぼく)が深まっています。


●所在地/阿賀野市学校町9-9 電話:0250-62-2455 ●学級数/19 ●生徒数/472人