「××先生が不倫旅行に行って感染した」「○○先生が飲み会をして広がったらしい」-。心を切り刻むような言葉がネット上で飛び交った。

 その一方で、傷ついた心を包み込む言葉に救われた。「大丈夫。一人じゃないよ」「みんなで一緒に乗り越えよう!」。学校に応援メッセージが届いた。

 昨年11月、新潟県柏崎市の荒浜小学校で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。子どもたちも教職員も言葉の怖さと醜さ、優しさと強さを肌で知った。

 教職員と児童22人が感染し臨時休校する中、SNS(会員制交流サイト)やネットの掲示板でデマが広がった。当時、小学生の感染は県内で初めてだった。

 デマにはさらに尾ひれがついた。最初の感染が同小の教職員だったことから、特定の教職員が攻撃され、学校側は苦情や説明を求める電話対応に追われた。空気が重苦しかった。

 それだけに、市内9小学校の児童が書いた寄せ書きは心にしみた。約2週間ぶりの登校日。荒浜小の玄関に飾られ、児童らを温かく出迎えた。疫病退散の妖怪「アマビエ」や、人気漫画「鬼滅の刃」のキャラクターも描かれていた。

 寄せ書きは、柏崎市内の小学校長会が企画。その後、市内の中学校や上越市の小学校からも届いた。大友宏幸教頭は「つらい気持ちを共有してくれて、教職員も勇気づけられた」と感謝する。

 ただ…。心の傷は簡単には癒えなかった。「美談以上につらい思いが残った」と学校関係者。学校を糾弾する多くの声は「正直、思い出したくない」。

■    ■

 新型ウイルスが教育現場に暗い影を落とす。

 新潟県や新潟市の教育委員会によると、県内の学校でこれまで確認された新型ウイルス関連のいじめは9件。子どもの感染が拡大する新潟市内では、4月に学級閉鎖をした市立学校・園が20に上った。感染不安を理由に、長期間休む子どもは昨年度、10人前後いた。

 感染禍が長期化する中、県内の学校では人権意識を深める機会につなげようとする動きが広がる。子どもたちが率先して行動するケースが目立つ。その一つが村上市の荒川中学校だ。

■    ■

 「命を守ってくれてありがとうございます」「差別に負けないでください」。地元にある新潟県立坂町病院に激励の横断幕を贈った。

 坂町病院では昨年11月に看護師1人が感染し、一部の外来診療を休止した。病院関係者の中には、保育園から子どもの登園を遠慮するように言われたり、医療機関の受診を断られたりしたケースがあった。

 それを知った生徒たちが、医療従事者にエールを送ろうと発案。話し合いを重ね、全校生徒が手書きのメッセージで思いを伝えた。

 渡辺安治(やすじ)校長は「人権が危ぶまれているからこそ、学びを深め、成長する機会にしたい」と力を込める。

 4月以降、村上市内の感染者は急増した。「明日は自分や友達が感染するかもしれない」と同中3年の生徒会長、志村雪生(せな)さん(14)。「誰が感染しても安心して戻れる教室にしたい。思いやりの心を広げていきたい」。未来をまっすぐ見つめた。

=おわり=

(この連載は報道部・小熊隆也、小林千剛が担当しました)