タクシーの車内で動画を配信する刈谷陽和さん=三条市興野2
タクシーの車内で動画を配信する刈谷陽和さん=三条市興野2

 新型コロナウイルスの影響で売り上げの低迷が続いていた三条タクシー(新潟県三条市興野2)が、約2年半ぶりとなる単月黒字化を達成した。宴会や観光の自粛ムードが残り、タクシー需要が以前のようには戻らない中、経営改善に一役買ったのは動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」。1人の女性ドライバーの日常を紹介するユーモラスな配信が注目を集め、全国にファンを増やしている。

 同社では新型ウイルスの流行が始まった2020年1月から赤字が続き、年間の売り上げがそれまでの半分以下に激減した。24時間営業を見直して稼働台数を減らしたり、出前サービスを始めたりと手を打ったものの、他のタクシー事業所と同様に苦しい状況が続いていた。

 転機は昨年9月。同社のドライバー刈谷陽和(ひより)さん(25)が、燕三条駅で乗せた客からTikTokでの発信を勧められた。同社はそれまでインスタグラムなどで広報していたが顧客獲得にはつなげられずにいたといい、刈谷さんはその日のうちにアプリをダウンロード。「会社の力になりたい」という一心で動画投稿の準備を始めた。

 動画には、刈谷さん自身が「会社を黒字にするために奮闘するタクシーのお姉さん」として登場する。クスッと笑える刈谷さんの言動や刈谷さんがお薦めする地元のスポットなどを、渡邉惣太社長(31)が撮影・編集して投稿している。

 天真らんまんで物おじしない刈谷さんのキャラクターが話題となり、今では7万7千人のフォロワーを獲得。投稿をきっかけに、刈谷さんを指名した貸し切り運行の予約も増え、中には関西や九州からの利用もあるという。

 「想像もつかなかった売り上げに驚いている」と刈谷さん。「私が成長する姿を楽しんでもらっている。応援したいという皆さんの気持ちを感じる」と感謝する。

 渡邉社長は「彼女が注目されるほど会社への注目度も高まり、他の従業員のサービス向上にもつながっている」と分析。タクシードライバーの視点で新潟の魅力を発信することで、「ゆくゆくは観光大使のような存在を目指したい」と構想を膨らませる。

 「今後も年間を通した黒字化に向けて頑張りたい」と刈谷さん。同社はSNSでの発信と平行し、刈谷さんのファンクラブの運営やオリジナルグッズの販売も手がけるなど取り組みを加速させている。業界ではドライバーの高齢化も進む中、渡邉社長は「社員が(インターネット上で影響力を持つ)インフルエンサーとして羽ばたける会社としてPRし、若い人材が集まるようになるといい」と期待を込めた。