北信越県大会で、脱帽して校歌を歌う中越の吉井主将(手前)ら。髪を伸ばした選手が目立つ=5月、長岡市悠久山
北信越県大会で、脱帽して校歌を歌う中越の吉井主将(手前)ら。髪を伸ばした選手が目立つ=5月、長岡市悠久山

 全国高校野球選手権新潟大会の開幕が7月9日に迫る。憧れの甲子園を目指し、白球を追う球児の情熱は、今も昔も変わらない。一方で、球児を取り巻く環境や価値観、成長を支える用具は刻々と変化が進む。高校野球がもっと輝くために、試行錯誤を続けるグラウンドを訪ねた。(運動部・渡辺伸也)

 ネイビーの帽子を脱ぐと、少し癖の付いた黒髪が風に揺れた。中越の主将、吉井愛斗は高校生活の大半を長髪で過ごす。「チームに今、丸刈りは半分いるか、いないか。髪を伸ばしても、やるプレーは何も変わらない」と淡々と話した。

 吉井は中学から頭を丸めた。所属チームの仲間が丸刈りだったからだ。中越に入学した2020年の夏、野球部は髪形を自由化した。以降も丸刈りのままの仲間は多かったが、吉井は髪を伸ばした。「周りが丸刈りだから自分も、は違う」と考えが変わった。

 本田仁哉監督は「高校野球の未来を考えたら、全員丸刈りが続くとは思えない」と以前から考えていた。18年夏に甲子園で対戦した慶応(神奈川)など、頭髪が自由な県外の高校も見てきた。

 自由化へ踏み切ったきっかけはウイルス禍だ。20年夏、甲子園大会は中止。部活はままならず、自主練も制限された。その状況でも力を発揮できる集団へ成長するには、「全てを主体的にできるかどうか」が鍵と考えた。すると、丸刈りを強制することへの違和感が膨らんだという。

 「脱丸刈り」は公立勢を中心に、新潟県内全体で進む。小出は昨年、選手間の話し合いで自由化を決めた。遠藤卓也監督は「今は他校を見ても、丸刈りの方が少ないくらい」と印象を語る。「他競技に比べ、競技人口の減少が激しいことも影響しているのでは」とみる。

 新潟県でこうした流れを生んだ要因の一つとされるのが、18年末のNIIGATA野球サミットでの出来事だ。「新潟明訓は、丸刈りをやめます-」。サミットでの波間一孝部長の宣言はインパクトを残し、全国から取材も殺到した。

 「髪形のせいで野球をやらない生徒がいるのはかわいそうだと思った」と波間部長は当初の経緯を説明する。

 19年春に就任した島田修監督は「主体性」をテーマに掲げる。適した髪形を考え、実践することは主体性を育む手段の一つ。新入部員に限っては、1年夏の大会終了まで髪を伸ばすルールとし、以降は各自の判断に委ねている。

 宣言後、しばらくは丸刈りゼロだった新潟明訓だが、今はグラウンドを訪ねると頭を丸めた選手も目立つ。そして、髪の長さを問わず、きびきびとグラウンドを駆ける姿が印象的だ。

 元県高野連専務理事の島田監督は「観客は未熟な若者に、何を期待して見に来るのか」と問いかける。髪形を含め、生徒に主体性を求める中、徹底させるのが全力疾走だ。

 県高野連が全国的な議論を巻き起こした球数制限の例も挙げ、こう語った。「変わらないといけないものは変えていく。ただ、高校野球の絶対に変わってはいけないものは、しっかりと守る」