求められるのは、災害対応での縦割りを突き崩す役割だ。国民の命と暮らしを守るため、全省庁の力を束ねられる組織としなければならない。

 政府の災害対応の中心となる「防災庁」の設置関連法案が、衆院を通過した。参院の審議を経て、今国会で成立する公算が大きい。

 災害が多発し、「国難級」とされる南海トラフ巨大地震などの発生が高い確率で見込まれる中、政府が目指す11月の発足に向けて一歩前進したといえる。

 防災庁は首相をトップとして、専任の防災相が業務を統括する。現在、災害対応をしている内閣府防災部局の1・6倍となる約350人を配置し、2027年度以降には地方機関「防災局」も設けて、体制を強化する。

 昨年12月に閣議決定した「防災立国の推進に向けた基本方針」では、防災庁を「平時から発災時、復旧・復興までの一貫した災害対応の司令塔」と位置付けた。

 業務は、防災施策の基本方針や計画を立案し、大規模災害の発生後は被災者や自治体の支援、政府の対策本部の運営などを担う。

 期待されるのは、適切な災害対応を統一的に進める役割だ。

 災害対応は、インフラ復旧や医療福祉面での支援など分野が多岐にわたり、担当する省庁も内閣府や国土交通省、厚生労働省など複数にまたがる。

 過去の災害では、省庁の連携不足から、避難所への支援物資の輸送が滞るといった縦割りの弊害が指摘されてきた。

 司令塔である防災庁は、各省庁の防災政策を見渡し、縦割りによる対策の漏れや抜け落ちを積極的にただす責務がある。

 法案で、取り組みが不十分な省庁への「勧告権」を与えるとしているのも、そのためだ。

 勧告権については、同じく勧告権を持つデジタル庁が、マイナンバー制度を巡るトラブル収拾で十分活用できなかった事例がある。

 命に直結する問題を扱う防災庁は教訓を踏まえ、勧告権を効果的に用いて対策を改善するべきだ。他省庁の協力も欠かせない。

 防災庁は、平時から被害の抑制を検討する「事前防災」の推進も担う。大規模災害のたびに課題となってきた災害関連死への対策も、検討の対象となる。

 関連死は、災害そのものではなく、過酷な避難生活などが心身に影響して起きる。16年の熊本地震では、亡くなった人のうち関連死が8割に達し、24年の能登半島地震でも7割に迫っている。

 災害を生き延びた命が、その後の環境によって奪われる事態を繰り返してはならない。

 防災庁は備蓄拡充や冷暖房設置など、避難所の環境改善にも取り組む方針だ。自治体や民間団体と連携し、地域事情に適した対策を講じることが求められる。