日本オリジナル主人公・レクスブレイド。アニメ『トランスフォーマー ワイルドキングW(ダブル)』より (C)TOMY
日本オリジナル主人公・レクスブレイド。アニメ『トランスフォーマー ワイルドキングW(ダブル)』より (C)TOMY

 先月20日、『トランスフォーマー』シリーズで、令和初となる“日本オリジナル主人公”が登場した。1984年の誕生以来、車や飛行機がロボットへと変形するギミックで世界的人気を築いてきた『トランスフォーマー』。日本でも玩具やアニメ、映画を通じて親しまれ、“変形ロボット”の代名詞的存在となっている。だが、その身近さの一方で、誕生の背景や制作の舞台裏については意外と知られていない。その実像をひもとくべく、発売元のタカラトミーに話を聞いた。

【アニメ】『トランスフォーマー ワイルドキングW(ダブル)』

■「何でもあり」が強み “変形の自由さ”が生んだ無限の世界観

 1980年代当時、「車や飛行機がロボットに変形する」という発想は、子どもたちに強烈なインパクトを与えた。巨大ロボット作品はすでに人気ジャンルだったが、“身近な乗り物そのものが変形し、意思を持って戦う”という設定は斬新だったうえ、変形を実際に自分の手で楽しめる玩具体験も大きな魅力だった。アニメ、コミック、玩具が一体となった展開は世界的ヒットを生み、『トランスフォーマー』は“変形ロボット”の代名詞としての地位を確立していく。

 その原点となったのが、タカラトミー(当時:タカラ)が展開していた二つの玩具シリーズだ。2007年公開のハリウッド映画『トランスフォーマー』が世界的大ヒットを記録して以降、“アメリカ発コンテンツ”という印象を持つ世代も少なくない。しかし、その出発点は、日本で生まれた変形玩具にある。タカラトミー コレクター事業部 マーケティング課の白井貴彦さんは、誕生の経緯をこう語る。

「1980年代前半、当時のタカラではSFメカをコンセプトにした『ダイアクロン』と、身の回りのカメラやカセットなどが変形する『ミクロチェンジ』(「ミクロマン」シリーズ)を展開していました。そこに目を付けたのが、アメリカの大手玩具メーカーであるハズブロ社です。ハズブロ社は二つの世界観を一つに統一して『トランスフォーマー』と名付け、コミックやアニメとともに展開しました。これが人気を博し、日本へ逆輸入する形で展開されることになりました」(タカラトミー コレクター事業部 マーケティング課・白井貴彦さん/以下同)

 以降、『トランスフォーマー』は作品ごとに異なる世界観を展開しながらシリーズを拡大していった。同じキャラクターでも作品によって性格や立場が変化するなど、設定の自由度が高いことも特徴だ。実写映画から動物型シリーズ、子ども向けまで幅広い作品が生み出されるなか、新たなキャラクターも次々と誕生してきた。

 40年を超える歴史のなかで、その数は膨大なものになっている。

「実は、これまでに出たキャラクターの総数は、私たちもハズブロ社も正確に把握できていません。毎年数十体の新キャラクターを作り続けており、色や武器が少し違うだけのものにも全て個別の名前や設定が与えられています。アニメや漫画には登場せず、おもちゃだけで展開されたキャラクターも数多く存在するため、その総数は計り知れません」

 現在も『トランスフォーマー』は、アメリカの玩具大手・ハズブロ社との協業体制で展開されている。多くの商品は協業のもとでキャラクターを選定し、そこへタカラトミーの開発陣が長年培ってきた変形設計の技術を注ぎ込み、“実際に遊べる玩具”として成立させている。

■映画化と企業コラボで進化した“実際に遊べる変形”の設計技術

 車や飛行機にとどまらず、動物、家電、さらには食べ物まで。身の回りのあらゆるものがロボットへと変形するのが『トランスフォーマー』の世界だ。アニメやコミックなら成立し得る大胆な発想であっても、“実際に遊べる玩具”として成立させるには高度な設計技術が欠かせない。そうした多様な変形を支えてきた背景には、映画化や企業コラボレーションを通じた技術進化の蓄積がある。

 大きな転機となったのは、2007年公開のハリウッド実写映画『トランスフォーマー』だった。

「映画版の準備段階で送られてきたロボットのデザインは、元の車の構造をほとんど感じさせないような非常にアグレッシブなものでした。どう考えてもこの車から変形するとは思えない驚きがありましたが、それでもおもちゃとして成立させる必要がありました。その過程で、変形設計の技術は大きく鍛えられていきました」

 さらに異業種とのコラボレーションも、設計技術の進化を後押ししてきた。ディズニーやカメラメーカー、スニーカーブランドなど、実在するプロダクトをロボットへと落とし込む挑戦が続いた。

「実在する形をベースに変形させるコラボ商品は、設計の難易度も非常に高くなります。形が決まっているものを、いかにロボットとして成立させるかが難しいところです」

 こうした技術の積み重ねは、極限的な商品開発にもつながっている。その代表例が、クラウドファンディング商品として企画された『ユニクロン』だ。

「『ユニクロン』は、惑星を食べながら生きている悪の帝王という設定で、巨大な惑星から変形するキャラクターです。球体からの変形は非常に難しく、構想から完成まで約2年かかりました。ロボットモードで全高約69センチ、惑星形態では最大幅95センチに及ぶシリーズ最大級の商品で、日本ではシリーズ最高額となる7万円でしたが、グローバルで目標の8000個を超える受注をいただきました」

■ 主役級キャラ“コンボイの死”に反対の声も…人間臭いドラマが生む熱狂

 『トランスフォーマー』の魅力は、“変形ロボット”というギミックだけでなく、世界観そのものにもある。彼らは誰かに操縦される存在ではなく、自らの意思を持つ「超ロボット生命体」として描かれており、その設定がファンの強い愛着につながってきた。

「初めてのアニメーション作品から、彼らは仲間同士で喧嘩もすれば、敵と共闘することもある、非常に人間っぽい感情を持ったロボットとして活躍しました。だからこそ、視聴者はキャラクターへの思い入れを強く持っています」

 その象徴的な出来事が、劇場版で主人公コンボイ(オプティマスプライム)が命を落とし、世代交代が描かれたエピソードだ。

「新しい玩具展開を見据えた主人公交代劇でしたが、日本では保護者の方からお電話で反対のご意見をいただいたり、イベントで子どもたちに『なんでコンボイが死んじゃったんだ』と泣きつかれたこともありました。当時の担当者たちにとっても苦い経験として語り継がれていますが、それほどまでに最初の作品から愛されるキャラクターになっていた証拠でもあります」

 こうしたキャラクター人気の高さは、ファン参加型企画にも発展していった。

「かつて流行した“総選挙”ブームに合わせて、キャラクターの『総選挙』を実施したことがあります。あらかじめ候補を10体ほど選定し、ファン投票で1位になったキャラクターを最高峰ブランドで商品化するという企画です。その結果、なかなか商品化に恵まれなかった『スターセイバー』が見事1位に輝き、無事に発売されました」

 『トランスフォーマー』のチームもまた、キャラクターへの強い思い入れを持ちながら開発やマーケティングに向き合っている。マーケティング担当の米田夏海さんは、敵キャラクターの奥行きある魅力を語る。

「私は敵側のスタースクリームというキャラクターが特にお気に入りです。初代アニメシリーズ(通称G1)では、リーダーのメガトロンを出し抜こうとする一方で、どこか憎めない性格をしていて、戦闘機に変形するシャープなデザインも魅力です。また、個人的にはスカイファイアーとの関係性がとても好きなのですが、『トランスフォーマー』はキャラクター同士の関係性も大きな魅力の1つだと思っています。だからこそ、ファンの皆様もキャラクター単体だけでなく、コンビや軍団として応援している方が多いのだと感じます」

■令和の子どもたちへ繋ぐ、新時代の『トランスフォーマー ワイルドキングW(ダブル)』

 1984年の誕生以来、世代ごとにコアなファンを生み出してきた『トランスフォーマー』は、現在も新たなファン獲得への挑戦を続けている。その最前線にあるのが、日本オリジナル展開となるYouTubeショートアニメ『トランスフォーマー ワイルドキング』だ。2025年3月に始動し、今年5月から第2シーズン『トランスフォーマー ワイルドキングW(ダブル)』が始まった。

「映画などの大型コンテンツは、公開のタイミングを逃すと新規の方が入りづらいという課題がありました。そこで、今の子供たちが好きなタイミングで何度でも気軽に視聴できるよう、短尺のYouTubeショートアニメという形式を採用しました。毎話、変形や合体、バトルといった子供たちが好きな要素を盛り込んでいます」(タカラトミー コレクター事業部 マーケティング課・米田夏海さん/以下同)

 おもちゃショーでの体験会でも、その新たなアプローチへの手応えは確かなものとなっている。

「驚いたのは、子どもたちが『トランスフォーマー ワイルドキング』のオリジナルキャラクターの名前をフルネームで覚え、熱心に魅力を語ってくれたことです。完全な新規キャラクターであっても、今の子どもたちにとっては彼ら自身の『新しいトランスフォーマー』として受け入れられているのだと実感しました。そこでいただいた声も後押しとなり、第2期ではレクスブレイドという完全日本オリジナルの新ヒーローを誕生させました。今回はあえて“オプティマスプライム”の名も使わず、完全新規の主人公に挑戦しています」

 『トランスフォーマー ワイルドキングW(ダブル)』の玩具には、40年以上の歴史の中で培われてきた“ヒットの要素”が凝縮されている。

「可動域の進化に加え、3段変形や合体といった、これまで人気を集めてきた要素を再構築しています。さらにアニメでは、1期に続き2期でも、キャラクター同士の関係性を大切に描き、トランスフォーマーが長年大切にしてきた魅力をしっかりと表現しています」

 42年の歴史を持つブランドが、これからも輝き続けるために必要なこと。それは、新しい世代へ向けて、常に新たな驚きを生み出し続けることだ。

「初代アニメや『ビーストウォーズ』、ハリウッド映画など、大きな波が来るたびに、その時代の子どもたちがファンになり、今もブランドを支えてくれています。そうした流れを途切れさせないためにも、映像作品と玩具をセットで届け続けることが重要だと考えています。今後も変形の驚きや面白さを大切にしながら、新しい作品を展開していきたいです」(タカラトミー コレクター事業部 マーケティング課・白井貴彦さん)