訓練に向け、段ボールベッドを組み立てる比角コミュニティ運営協議会のスタッフ=柏崎市比角2の比角コミュニティセンター
訓練に向け、段ボールベッドを組み立てる比角コミュニティ運営協議会のスタッフ=柏崎市比角2の比角コミュニティセンター

 2007年の中越沖地震でほぼ全世帯で住宅に被害が出た新潟県柏崎市比角地区の住民が、震災の記憶を継承する取り組みを続けている。16日で発生から14年が経過し、当時を知らない住民が増える中、活動の中心を担う比角コミュニティ運営協議会は「隣近所で助け合う地域にしたい」と知恵を絞る。

 比角地区では震災による死者はいなかったが、144棟が全壊。一部損壊も含めると約3500世帯のほぼ全てが被害を受けた。避難所となった比角コミュニティセンターには、最大で約300人が身を寄せた。

 コミ協の多田哲雄副会長(65)は当時、市武道館(同市栄町)に集まった物資を住民や市職員らと協力して比角コミセンに運んだ。「被災者の手足となろうという気持ちだった」と振り返る。

 以前からサークル活動が活発で住民間のつながりが強い同地区。中越沖地震の際は、コミ協役員を中心に多くの住民や被災者自身が避難所運営に関わった。住民主体で避難所を運営した成功事例として全国的にも注目を集めた。

 震災後は、地区内の全26町内会に自主防災組織が設けられた。ただ、避難訓練などの取り組みには町内会によって温度差が生じていた面もあったという。

 地震発生から14年。サークル活動の参加者は高齢者が中心となり、震災後に住民となった人も増えた。

 比角コミセンの矢川範子センター長(52)は当時、2歳の双子の子どもと被害が少なかった自宅にいた。「若いお母さんから『中越沖地震があったんですか』と言われたこともある。若い世代は災害の怖さを知らず、地震を経験した世代も忘れつつある」と、世代を超えた交流の難しさを感じている。

 19年にコミ協会長に就いた田村光一さん(63)も「災害時に誰が協力してくれるのか分かりづらくなっている」と危惧する。「避難所運営は行政だけでは手が回らない。住民にも協力してもらうために中越沖の記憶継承とコミ協単位の訓練が必要だ」と話す。

 コミ協では20年度、「防災・防犯部」を立ち上げた。田村さんと、19年に防災士の資格を取った多田さんが中心となり、ことし3月には避難所運営マニュアルを作成。コミ協が管理する4避難所のどこに逃げるかを町内会ごとに割り振り、情報伝達、食料物資運搬、要配慮者への目配りなど各役員の役割を明確にした。

 18日には比角コミセンで、役員を対象に初めての避難所運営訓練を実施する。震災の体験を参加者が共有し、被災者名簿の作成や段ボールベッドの組み立て、無線機を使った情報伝達などを行う予定だ。

 来年は住民にも参加を呼び掛け、4避難所を開設する訓練を想定。世代間交流の場となることも期待する。田村さんは「訓練を通して、高齢者の知恵と若者の力を一緒に発揮できる地域にしたい」と力を込めた。