東証2部上場で鉄鋼製品製造の北越メタル(新潟県長岡市)は27日、コンクリート製品製造の共和コンクリート工業(札幌市)と業務提携基本契約を結んだ。トンネルや橋など鉄筋とコンクリートが材料となる建設構造物を効率的に生産する狙いがあり、同日付で中核となる合弁会社を設立した。鉄鋼、コンクリート両業界のメーカーが業務提携するのは珍しいといい、両社のノウハウ融合により低コストで高品質な鉄筋入りコンクリート製品を提案していく。
鉄筋やコンクリートはどちらも各種インフラの基礎となる建設構造物の主要材料だが、流通経路には商社などが介在しており、各業界のメーカー同士は直接的には交わらないという。そのため鉄筋を骨格とするコンクリート構造物を作る際にも、鉄筋の特性などを詳しく把握できないまま製造されることが多いとされる。
そこで北越メタルは、両業界のメーカーで鉄鋼製品の特徴や加工特性などが共有できれば、効率的な生産につながると想定。交通インフラ向けの構造物などで実績があり、今後も道路建設などで需要増を見込んでいる共和コンクリート工業と思惑が一致した。
北越メタルの2021年3月期の売上高は218億円。共和コンクリート工業はコンクリートブロック業界でトップクラスの販売実績があり、21年5月期の売上高は590億円。
連携体制を整えるため、両社は27日付で合弁会社「イノヴァス」を設立した。資本金は1千万円、出資比率は北越メタル51%、共和コンクリート工業49%。
製品作りに当たっては、イノヴァスが仲介役となり、各社に生産などの業務を委託する。北越メタルは、鉄筋の組み合わせ方や曲げ方といった加工仕様の最適化、設計業務などを担う。工場から建設現場に運搬しやすいような作業方法なども考案する。共和コンクリートは、部材の調達や最終製品の販売などを行う。
将来は、ゼネコンからの受注に先んじて、オリジナルの建設構造物を開発する構想も持つ。提案型の営業にも取り組むことで、安定的な経営体制につなげたい考えだ。
イノヴァスの売上高は2021年度に1億2800万円、30年度には10億円超まで伸ばす計画を立てている。
27日は長岡市内で契約調印式が行われた。北越メタルの棚橋章社長は「お互いに会話を交わしながら技術を伸ばし、建設現場の役に立ちたい」と語った。共和コンクリート工業の本間丈士社長は「お互いのノウハウを持ち寄り、融合させて新たなアイデアを生み出していければ」と期待を寄せた。
イノヴァスの社長に就いた北越メタルの武仲康剛専務は「鉄鋼とコンクリートは同じ建設業界ながら、従来の商習慣では近いようで遠い関係だった。今までにないプロジェクトになる」と意気込みを語った。