「新潟県を元気にしたい」提言

【産業経済部門】最優秀賞「新潟日報大賞」
超広域観光DMO創出の提言 機能する観光を新潟県から
~「より深い日本」日本海城下町ガストロノミーを観光のコアに~

新道掛蔵通り保存推進協議会理事 相良学

はじめに

 この記述は内閣府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2017改訂版)の政策パッケージ(1)(ア)Bに記載された地域の魅力のブランド化(ローカルブランディング)および新潟県観光立県推進行動計画(平成29年3月)において記載された「旅行の楽しみであり観光旅行者の期待の高い"食"の魅力向上を図り、満足いただくため地域食材を生かした食の魅力づくりを推進します」の理念をもとに、新潟県を中心に実施する前提で考察したものです。

1.新潟県の観光の現状と課題

 新潟県は少し前まで「新潟の観光といえば冬場だけ」といわれるほど、ウインタースポーツ以外の観光コンテンツが少ない地域だった印象がありました。

 関東や関西などで聞き取りをすると、新潟の印象として出現するワードは、スキー・スノボ、雪、お米、海産物、温泉でした。

 豊富な観光資源を有する新潟県ですが、"食"ひとつをとっても県全体で活かしきれていない印象をぬぐえません。

 ここにグリーンシーズンにおける旅客が伸び悩む原因が潜在していると考えます。

 新潟県全体を、他県に、そして海外に訴求するための実効性のあるテーマが必要です。

 東京~京都~大阪のゴールデンルートに対抗し旅客を誘致するには、広範囲なエリアを、共通のテーマをもった新たな価値の創出が必要と考えます。

 そのテーマには観光旅客の欲求が高い「食」がふさわしく、「地元の美食を楽しむ」という非日常体験を演出する共通の仕組みが必要と提言するものです。

2.地域を元気にする新たな超広域観光DMO創出の提言

【超広域観光DMOの定義:複数の県が連携し大きなエリアでの付加価値を創造する組織】

 観光地として躍進したい城下町(中規模人口の都市)を繋ぐネットワークの創出。

例・北前船の寄港地を結ぶ、秋田・山形・新潟・富山・石川・福井が連携した超広域観光DMOを組織。

 人口30万人くらいまでの城下町で、観光資源を有し、観光旅客を誘致し観光地として躍進したい都市を集め、ゴールデンルートに比肩しうる広域観光圏を実現するためのアライアンスを組織することを提言します。

 自治体単位の企画だと、エリアが狭くなり、県全体の魅力向上の意味で広がりに欠けます。

 近年では雪国観光圏やトキめき観光圏のように若干広めのエリアで連携し、魅力の補完を行うアライアンスが組まれていますが、"ゴールデンルートに比肩する"という観点からみるとインパクトに欠ける事は否めません。

 また個々の都市では観光資源を多数有しながらも、観光地化できない都市が多数あり、共通して「如何に観光旅客を誘致できる魅力を創出するか」という課題を抱えています。

 そこで北前船の寄港地を江戸時代に有していた秋田・酒田・鶴岡・新発田・上越・高岡・敦賀・小浜などの城下町に、上山・長岡・加賀・坂井などの歴史的な背景を有する都市を加え(都市は案として記載)、共通の価値を有するアライアンスを組むなど、現実的な連携が可能となる組織づくりを提案します。

別紙1「環日本海連携型DMOの概念と連携する城下町のイメージ」を参照)

3.城下町を結ぶ食のコンテンツ「日本海城下町ガストロノミー(美食学)」の創出

 観光旅客が旅先に求めるものは「充実した食の提供」といえます。

 超広域観光DMOが行う事業の核となるコンテンツは「食」である事が望ましいです。

 その地でなければ食べられない「食材」であるとか、「料理技術」や「提供方法」等、オンリーワンもしくはナンバーワンでなければ観光旅客は目指して来ません。

 スペインのサンセバスチャンさながら「その街を目指す」動機づけが必要です。

 かつて日本には300を超える藩が存在しました。

 それぞれの藩主が、それぞれの文化や食材を街に持込み、各藩毎の独自の食文化が形成されたといっても過言ではありません。

 その独自の食文化に「城下町の美食」という共通テーマを持たせることで、「歴史と日本海の美食を堪能できるエリア」として、ゴールデンルートに比肩する、新たな観光ルートとして国内外に訴求できると考えます。

 日本海の城下町を巡るコンテンツとして「城下町ガストロノミー」を提言します。

4.共通テーマを策定し、実効的コンテンツを構築するためのコンベンションを開催

 前段の超広域観光圏を機能させるため、共通テーマを持つことでインバウンド旅客に人気のゴールデンルートに比肩しうる、新たな広域観光圏の創出を実現するため、大規模コンベンションの開催を提言します。(大規模コンベンションを実施しうる新たな都市の開拓は、国が平成29年8月に官報で通知しているもの)

 新潟県内には城郭や城址などが現存する都市があるが、本来キラーコンテンツとなりうる歴史的観光資源も十分な活用がなされているとは言いづらい状況です。

 京都や東京などのように観光資源が密集しているわけではないため、その都市だけだと移動にかかる対価や時間に対して「満足できないかもしれない」となります。

 重要なのは観光旅客が「巡りたくなる」価値を創出する事ではないでしょうか。

 そのため観光立市を目指しアライアンスを組める自治体に声をかけ、共通の価値を表すテーマの採択と、実効的な観光コンテンツの創出を協働するための大規模なコンベンションを実施し、新たな観光ルートの誕生を国内外に知らしむるべきです。

5.「城下町ガストロノミー」で想定される観光コンテンツの実施例

・宿泊施設と連動し、一泊朝食付き宿泊と地域内の料理店を巡るコンテンツを創造

新発田で平成29年11月から2年半実施する「八寸おりおり」

私が住む町、新発田の企画を例に挙げます。

 城下町としての新発田は、新発田城・清水園などの歴史的建造物が多く残り、山あり海ありの自然豊かな地域ですが、観光地としての認知度が低いのが現状です。

 これは観光資源に対し観光のコンテンツ(中身)が脆弱である事が最大の原因です。

 そのため新たな観光コンテンツとして、老舗割烹料理店などを、手頃な価格で巡り歩く企画を造成し、観光コンテンツの核に据えたいと考えました。

 これは会席料理の前菜にあたる「八寸」にフォーカスした食の企画です。

 八寸は24cm×24㎝(一寸=3㎝)の皿に料理を盛り込んだもので、その料理店の調理技術やセンスが如実に表れる一品です。

 通常であれば料理店で八寸だけを注文する事は難しいですが、八寸だけを抜き出して提供することで、女性客でも料理店をはしごでき、かつ価格を低価格とすることで、旅館の夕食に置き換えられ観光客は観光先で非日常を手軽に体験できる企画です。

 これを新たな観光形態である一泊朝食付き宿泊の観光に向け、夕食に対応する企画として企画自体を民間が主体となり考え、新潟県新発田地域振興局事業として、平成29年11月より実施しています。

 温泉旅館やホテルなどは一部の大型旅館を除き、宿泊料金のうちで夕食に充当する比率が大きく、宿泊料金を抑えた宿では利益の確保が難しいという現状があります。

 結果的に宿泊施設が現状で求められているFIT(個人手配の観光旅客)などへの宿泊プランの提案選択肢は、温泉地や宿泊施設の周辺地に、高価値の飲食店が十分に存在しなければ増やせない現状であり、その結果が各温泉地の衰退です。

 安価な交通費と割安な宿泊費を組み合わせながら観光地を楽しむ、そんな方々には今までとは違う価値の提案が必要となります。

 このような仕組みを新潟から発信し、日本海側の城下町で同様の取り組みを行えば日本海側の各城下町都市も観光地として成立するのではないでしょうか。

 共通の価値観の中で、食の新たな価値を創造し企画実行する、これが私の提唱する城下町ガストロノミー構想です。

(八寸おりおり全体イメージは別紙2
を、企画フライヤーは別紙3をご参照ください)

6.城下町ガストロノミーがもたらす副産物

 上記を遂行することで新たな層の旅客を獲得することが出来ます。

 観光旅客を誘致する事で地域内の消費額を増やし、提供する料理に周辺地域の食材を多く使うことで、地域内生産量と地域内に留保できる金額(消費総額)を向上させる、つまり外貨獲得と地域生産品の消費量増大を並行して推進する事が可能になります。

 またお土産物や地酒など、企画と連動させる事により新たな販路開拓も伺えます。

 斬新な発想と経営的思考をもつ民間の力を企画推進力とし、経済的な推進力を行政が担うといった図式の官民協力型のDMOを創出するべきと提言します。

7.まとめ

 昨今、日本版DMOの創設が盛んですが、行政主体のDMOですと、公平性を重要視するあまり、独創性に乏しい既視感のあるマネジメントをしがちで、旅行者が求める「ここにしかない」価値の創造につながらない事が多いと感じます。民間が観光DMOを主体的に運営することで「稼げる仕組」をとことん追及し、実効性のあるコンテンツの推進をマネジメントする、観光旅客が求める「食」に特化したコンテンツを武器に、日本海側の都市に大きな共通価値を創出する、そこに「行ってみたい」が生まれます。

 共通価値を持った広いエリアが「日本のオンリーワン」となります。

 日本海側の新たな観光ルートの創出。

 これこそが地域を、そして新潟県を元気にします。

地域に有効な観光産業の活性化にこそ「人口減少による地域経済の縮小が更なる人口減少を呼ぶ」という負のスパイラルから脱出する活性化策であると提言します。