「新潟県を元気にしたい」提言

【地域部門】奨励賞
「子ども×シニア=小千谷大学」 オヂヤノミクス!

西巻克哉

 「正月めーにかまくら作んな!」小学生の頃、冬休みが始まってすぐに友達とかまくらを作っていたら、近所のお爺さんに怒られた。今振り返ると、きっと正月前の雪は気温が高い関係で重たいのだろう。お爺さんとしては危なっかしくて見てられなかったに違いない。昔は、このように地域のお爺さん、お婆さんが子どもの行動に目を配っていて怒られたが、このシステムのおかげで大人になった今も、懐かしい思い出とともに生きた教訓として身に染みている。

 この地域の方々の目配りというものが教育の原点であり、江戸時代まで各地に存在していた寺子屋もその一種である。地域の方々の力のおかげで、日本人の識字率は高く(江戸時代の庶民の50%程は読み書きができたという。同時代のイギリスは10%程であった)、礼儀も良く、何より子どものうちから人間社会を学ぶ事ができた。

 明治維新から脅威のスピードで近代化を成し遂げる事ができた背景には、寺子屋のような地域の力で育った人材のおかげである事は言うまでもなく、この地域の教育=地育こそが、日本が世界に誇る文化、システムではないだろうか。

 しかし現代は子どもの数も減り、核家族化、学校と塾の往復、大人が子どもに声をかけたら怪しい人だと疑われ・・・。子どもの人間関係の広がりが狭くなっており、地育が衰退している。

 結論から申し上げると、私は故郷の小千谷に大学を創りたい。大学とはユニバーシティという意味ではなく、小学生を対象とした多世代交流型の寺子屋のようなシステム・施設である。

 小学生が放課後、気軽に小千谷大学に行く。待っているのは主に仕事を退職したり、子育て等が一段落している地域のシニアの方々だ。そのシニアは一芸に秀でた方々で、元教師、看護師、農家、将棋が上手など様々。

 小学生は、大学でまずは宿題を行う。わからない個所はシニアに教えていただく。その後はお待ちかねのフリータイム。小学生とシニアが一緒に時間を過ごす。勉強の続きをやっても良し、将棋を指しても良し、英語での会話をやっても良し。「よーし!これからおらちの畑で野菜を収穫するか!」という展開も。

 「小学生×シニア=地域の活性化→新潟県の活性化」に繋がると考えており、以下に提言の背景、目的と内容、効果について述べる。

1.背景

 壮年(20代~50代)はともかく、日本の小学生とシニアは元気がない! 例えば、小学生。何人か集まっても、ぼんやりゲームをしている。眼に輝きがない!先日、同級生とその子どもでバーベキューをした後に、野球をする事に。なんと、今の子どもは野球のルールを知らない! やった事もない! 缶けりも同様。このまま遊びを知らず、大人になって良いのか。

 あまり元気がないシニアが周りにたくさんいるように感じる。もっと彼らを社会が必要としていれば、シニアももっと輝けるのではないか。

 私は学生時代にバックパッカーとして、インド、ネパール、エジプト、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ギリシャ、タイ、カンボジア、台湾、中国のありのままの姿を見た。その旅の中で最も印象的であった事は「みんな人生を楽しんでいる!」という事であり、特に子どもとシニアが顕著であった。子どもは日本の子どもと目の輝きが違う。好奇心が旺盛で言葉は通じないものの、元気に生きている。トルコのチャナッカレ(トロイの木馬の遺跡)では、遠足中の小学生に囲まれて、遺跡を見学。皆で記念撮影をした。

 シニアも楽しそうだった。台湾の台中には夜中の12時頃に到着。夜市に顔を出すと「リーペン!」(日本!)とシニア3人に呼ばれ、一緒に宴会に。ルーマニアでは、カフェで昼間からシニアが酒を飲み、カードゲームをしている。

 どの国でも壮年は仕事や家庭があり多忙なのだろう。日本人とあまり変わらない。しかし、子どもとシニアが日本と比較し、圧倒的に楽しそうであった。

 つまり壮年は世界共通の認識として、放っておいても元気なのである。だが日本の子どもとシニアは元気がない。したがって、日本の子ども(小学生)×シニアで何かが生まれるのではと考えた事がこの提言の源泉である。

2. 目的と内容

 では小学生とシニアが一緒になって何するが?と言われてしまう。人間にとって唯一の平等は、1日24時間という時間だ。シニアは比較的時間にゆとりがあると思う。小学生は学校が3時~4時くらいに下校となり、夜は9時~10時くらいに寝ることが多い。だから両者の行動可能な夕方4時~7時の間に大学を開講する。

 ニーズがないのでは?学童保育がある!と思われる方もいるだろう。学童保育は基本的に3年生まで。塾がある!という方もいるだろう。塾は勉強を見てくれるが長時間預かる事はなく、料金も高い。週1回通って月謝は1万円程。小千谷市民の平均年収は250万円であり、かなりの負担となる。しかし優秀な先生方も、成績アップや進学率アップが至上命題であり、コミュニケーション力向上や礼儀の指導にまでは手が回らない。 

 そこで学童保育と進学塾の中間の位置に小千谷大学が存在し、学童保育と、学習塾の良い所を取り入れたらどうだろうか。

 小千谷大学の特徴として

  1. 対応時間は学童保育よりも長く、最大4時間
  2. 料金は学習塾よりも安く、月謝は8,000円
  3. 場所は旧小千谷病院の建物や、本町の空店舗などを再利用
  4. 運営は学校長(教員免許保有者などを保有する40歳未満の若者を公募)、事務局長(教員経験者などを公募)、スタッフ(シニア)、不登校の子どもで行う。不登校の子どもは、小千谷大学でボランティアを行うことで、出席日数としてカウントする。小中学生で学校に通えなかったとしても、小千谷大学が受け皿となる
  5. 内容は最低限、宿題の対応を行い、その後はシニアの知識、経験を活かした勉強・遊び(絵、習字、生け花、そろばん、英語、将棋など)。土日にワンコイン体験(農業、遠足、料理教室など)も企画する
  6. 軌道に乗った後は農家の方々と連携し「子ども食堂」も運営する

3.効果

  1. 地域の子どもとシニアが交流することで、年齢・世代に関係なく相互に関係が深まり、双方でコミュニケーション力が向上する。
  2. 子どもは「学校では教えてくれないこと」を学び、体験することができる。
  3. シニアは自身の知識や経験を活かすことが可能なると共に、時間を有効活用できる。
  4. 地育が広まり、子育てしやすい街として出生率の向上等に繋がる。
  5. 故郷に愛着を持つ子どもが増え、大学進学等で一度故郷を離れた子どもが、就職活動時に故郷に戻る事を選択の一つとする(Uターン率の向上)。

4.まとめ

 本提言では小千谷大学として検討したが、受けてくれるシニアと、場所さえあればこの提言は県内または他の地域でも実践できる。まずは小千谷でスキームを確立してみたい。また既存の学習塾や、学童保育とも住みわけができているので、摩擦を起こす可能性も低い。むしろ学習塾とは相乗効果が生まれるのではないか。

 小千谷には、鯉、闘牛、小千谷縮等の伝統的な産業が多いが、逆にそれ以外の産業が興らない。目立った資源もあるわけではなく、子どもこそが未来を担う資源である。私はその子どもに小千谷大学で、学校では教えてくれない経験をたくさん積んで欲しい。そして将来は小千谷で生まれ育った事を誇りに持ち、仕事や勉強に一辺倒となるのではなく、それ以外の分野にも関心や興味を持ち、目を輝かせて生きて欲しい。