「新潟県を元気にしたい」提言

【地域部門】奨励賞
未来志向で新潟の強みをフル活用 ~2050年の新潟ライフを見据えて~

新潟せいさく所

1.提言にあたって
 新潟日報が140周年を迎え、新潟湊の開港150周年を控える今、世界における新潟は転換期にある。各種統計や将来予測をもとに、約30年後の2050年の世界、日本、そして新潟県の状況から、「新潟ライフ」を想定し、これからの変化を念頭に置きつつ新潟の強みを活かした「新潟県産業経済の活性化」に関する提言を行いたい。

2-1.2050年の「新潟ライフ」

 2017年に誕生した悠真さん33歳の生活を思い描いてみる。ちなみに「悠真」は2017年生れの男の子に最も多く名付けられた名前だ。職業はどうだろう、博報堂未来総研のホームページにある早大ファイナンス総合研究所野口悠紀雄顧問の2015年の予測によれば、介護、医療従事者が労働力人口の約25%を占めるとしている。これは、2014年の新潟県の産業構造では、医療・福祉の従事者数が全体の12.3%なのでその2倍の割合となる。同年、新潟県の産業構造の中で最も従事者が多い卸売・小売の割合でも20.9%、次に多い製造業でも19.4%なので、25%の存在感は大きい。悠真もきっと医療・介護関係の職に就いているだろう。

 次に家族についてだ。悠真が生まれた2017年、32歳だった両親は65歳になっている。国立社会保障・人口問題研究所によると、2050年、日本の総人口が1億43万人と推定される中で、65歳以上の割合が36.9%であるのだから、世の中を見渡せばまだまだ若いことになる。新潟県内にあってはさらにこの傾向は顕著であり、2050年の10年前、2040年の段階で新潟県の総人口が179万人と推定される中で65歳以上の割合が38.7%になるのだから、65歳の両親が「高齢者」として認知されなくなっているだろう。しかし、2050年までに彼らにとって安心できることもある。イギリスUCLのデービッド・テイラー名誉教授の2015年の研究報告書によれば、80歳未満のがん死亡者がいなくなるとしているからだ。

 悠真の祖父、祖母はどうだろう。悠真の両親が1985年生れだから、その親は27歳くらいの時に出産していることだろう。2050年、健在であれば92歳、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると2050年の日本の平均寿命は、男性で84.0歳、女性は90.4歳だ、祖父は他界しているかもしれないが、人生90年時代の到来の中にいる祖母はそろそろ「お迎え」を意識する頃だが、存命で高度な医療技術や介護を受けていれば、健康寿命の中にいることだろう。

 これらが2050年の「新潟ライフ」を送る今年生まれた子どもと、その家族の「あるある」の状況である。

2-2.人口構造と生活環境の変化

 次に2050年の社会の状況や生活について、まず、人口とその構造について見てみる。国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の人口は、2050年には1億43万5千人となり、対2015年で2,666万人、21%の減少となる。新潟県も2040年には179万1千人となり、対2015年で約50万7千人減少、全国に10年先駆けて22%の減少となる。

 一方で世界に目を向けると、総務省統計局による世界の人口は、2015年で73億4,900万人であるが、2050年には97億2,500万人と、23億7,600万人の増加となる。中でも、アフリカ地域の人口増加が顕著であり、2015年は11億8,600万人であるのに対し、2050年までに24億7,800万人となり、全人口の25.5%までを占める。またこれに伴い農水省が2012年に発表した見通しによれば、この人口を養うために食料生産全体を1.6倍に引き上げる必要があるとしている。

 また、2050年に全人口の54.2%を占めるアジア諸国では高齢化が進んでいる。2050年段階での、中国の65歳以上人口は3億7,200万人、対2010年比で338%増、またインドでも65歳以上人口は2億3,400万人、対2010年比373%増となるなど、高齢者向けの医療・介護関係のビジネスの需要が増加すると予想される。

 また、生活環境はどのように変化しているだろうか。野村総合研究所グループ「NRI未来年表2017~2100」によれば、2040年には再生可能エネルギーによる発電シェアは世界全体で37%に増加し、2045年には、人工知能が人間の能力を追い抜き、2050年には再生医療の国内市場規模は2.5兆円、自動運転の市場規模は4.6兆円、介護予防ロボットの市場規模は2,770億円に達すると予想されている。

 これらが、各種統計や将来予測をもとにした、約30年後の2050年の世界、日本、そして新潟県の状況である。各種統計や将来予測が大きな間違いがなければ、このような姿になっていることだろう。

3.2050年に向けた課題と新潟の強み

 まず、日本では「平均寿命の延伸とQOL確保」「高齢者数の増加に伴う医療・介護需要の増加への対応」「生産年齢人口の減少による新潟産業の維持」という課題が考えられる。

(1)食産業における強み

 新潟の「食産業」の強みは、①米を中心とした発酵、醸造、加工の技術やノウハウが企業に蓄積していること、②農業及び食品産業の振興を図るための研究、開発、評価を行う公立の機関である「新潟県農業総合研究所食品研究センター」や都道府県立では唯一の酒に関する試験場で、健康志向製品の開発、海外進出に向けた醸造法の開発等を行う「新潟県醸造試験場」など、食品に関係する研究所が数多くあり、研究開発を行える人材・機関が充実していること、③医療や介護、薬学に関する大学機関を有すること、④新潟市においてニューフードバレーなどの新潟の強みを活かした取り組みがすでに実施されていること、である。これらの強みを生かした、新潟を世界で最先端の食とその加工の研究地を形成することができる。

 80歳未満のがん死亡者がいなくなり、人生90年時代が到来し、健康寿命が伸び、生涯在宅であったとしても、肉体的な老いと、終末期から逃れることはできない。しかしその中に置いてもQOL確保は重要であり、食で言えば、どこまで経口により食事を摂ることができるかは重要になってくる。具体的にイメージすれば、92歳の悠真のおばあちゃんは何を摂取して幸せに暮らしているかということだ。

 例えば、最近再評価されてきている「甘酒」は、飲む点滴と言われる。「ブドウ糖のほか体外から取り入れる必要のある必須アミノ酸9種、ビタミンB群が含まれ、『飲む点滴』と言われるゆえんを再確認した」という、2016年の日本生物工学会では、甘酒に関する八海醸造の研究グループの発表に注目が集まった。このように、栄養価も高くまた摂取しやすい食品を研究・開発していける素地がある。

 また、新潟の土地を利用して世界の食料需要に応えるために、十分な量の穀物を生産することは現実的ではないが、栄養価が高く,QOL確保に繋がる食品加工の技術とノウハウを世界に提供する、世界の食料問題とアジアの高齢化へソリューションを提供する食ビジネスの創造により経済が潤い、さらに豊かな生活に深めて行くことはできるであろう。

(2)エネルギー自給における強み

 人口増加に伴い食料生産、経済活動、日常生活の必要性からエネルギーに対する需要が高まる中で、エネルギーの自給自足はQOL確保と産業の発展に欠かせない。また、2040年には再生可能エネルギーによる発電シェアは世界全体で37%となる時代が到来する。その中で、新潟の強みは①約2,000平方キロメートルの越後平野とそこに広がる農地、②流量で日本の第1位の信濃川と第4位の阿賀野川、③全国一の人口あたりの建設業従業者数を誇る建設業、である。越後平野のほとんどは農地であり、日本で最も広い関東平野のように建物に覆われている状況でないこと、また、人口減少に伴うコメ需要の低下、農業従事者の減少や後継者問題などにより、耕作放棄地は増加することが予測される中で、自然エネルギーの生産地となり得るポテンシャルを持っている。

(3)技術分野における強み

 80歳未満の人ががんで亡くなることのない高度な医療・介護が発展した世の中では、終末期直前まで在宅で医療や介護を受けることとなるが、医療・介護分野に従事するものが25%を超えたとしても、これらを支えるロボット技術などが求められる。また、医療・介護分野だけでなく、自動運転技術の普及などロボットやテクノロジーの分野が成長していく中で、これを設計・デザインする力と、これを具現化するために必要な材料の加工技術は欠かせない。その中で新潟の強みは、①ロボカップジュニア世界大会優勝や学生ロボコンなどで数多くの受賞歴をもつ、長岡工業高等専門学校や長岡技術科学大学、新潟大学工学部などを有し、ロボットやテクノロジーの設計・デザインの分野のスペシャリストを多く輩出することができること、②高度な金属加工技術も兼ね備えていること、である。この強みを活かし、医療・介護分野、自動運転技術の普及などロボットやテクノロジー分野が成長する世の中に対応していくことができるだろう。

4.未来志向で新潟の強みをフル活用

 「未来志向」とは未来に目標を定め向かうこと、未来に起こり得る現実「新潟ライフ」に目を背けず、新潟の強みを認識し、その強みを意識してフル活用することが、「新潟県産業経済の活性化」に繋がる。深い冬を越え、産業経済の新たな芽吹きを得るためには、新潟における各プレイヤーが未来志向で、現実的に強みを生かして堅実に、愚直に取り組むことだろう。