[未来のチカラ in 県北]
新発田、村上、胎内、聖籠、関川、粟島浦の6市町村が10年後も輝いているためには何が必要か-農漁業者や主婦ら9人が1次産業の視点から提言をまとめた。提言チームは住民の誇りを育み、若者が地元で暮らし続けるためには「地域の食の豊かさを住民自身が知り、守り、育て、伝える好循環を生み出すこと」と提案した。
会場で熱心に耳を傾ける人たち
チームを代表して、関川村の加藤克徳さん、新発田市の津村賢さん、村上市の石井郁子さんが登壇。「私たちは地域の未来を創り出すため、できることから行動に移します」と力を込めた。
発表では、現状の課題として、1次産業従事者の減少と高齢化、農地の荒廃、水産資源の減少などを列挙。さらに、各地域には食材や調味料が豊富な一方、その魅力が住民にも十分に認識されていないことに危機感をにじませた。
これらの課題に対し、五つの理想像を提示し、それぞれ説明した。
【理想像(1) 人や自然に合わせたスマート技術の確立と導入】農業機械の自動運転化が進めば、誰でも精密な作業ができる。スマートフォンなどで、田畑の機械を操作できれば、作業負担が軽減され、新たな挑戦ができる。高額な農業機械を共有(シェア)できる仕組みを導入することで、兼業や趣味の農業が広がり、より身近な産業になる。
【理想像(2) エネルギーの創出】太陽光、風力、用排水路での小水力発電でエネルギーを有効活用する。廃棄物、間伐材を使ったバイオマス発電も可能だ。ボイラーや乾燥機から排出される二酸化炭素は、農作物の生育促進に活用できる。稲作農家が処理に困っている「もみ殻」は焼却施設を造り、くん炭にして土壌改良などに有効活用する。
【理想像(3) 農水産物の情報発信と販路開拓】村上の
【理想像(4) 地域の食の良さを住民が知り、子どもたちに伝える】6市町村それぞれに名産物がたくさんある。その食材の歴史や由来を知ると、食の奥深さや地域の豊かさを実感できる。調理実習や栄養学習などを通じ、子どもたちに伝えたい。ジビエ料理も注目だ。地元を離れても、故郷の味を懐かしんだり、自慢に思ったりしてほしい。
【理想像(5) 田舎を楽しむテーマパークづくりと田舎体験ツアー】耕地面積が小さい中山間地では、スマート技術の効果が限定されるため、「小さい農業」に価値を見い出した。昔ながらの農作業、魚釣り、自然散策などを体験してもらい、人間らしさを実感できる場所にする。農家の支援や1次産業へのイメージアップも期待できる。
<提言者>
関川村 加藤克徳 七ヶ谷・谷人倶楽部代表
新発田市 津村賢 津村農園
村上市 石井郁子 イヨボヤの里開発公社
県では、地域の魅力をあらためて考え、積極的に表現してもらう環境づくりを進めるため、昨年度から地域の新潟の魅力を考える懇談会を開催するとともに、会員制交流サイト(SNS)などを活用して発信する「新潟※(コメジルシ)プロジェクト」などの取り組みを進めている。地域の価値を見つめ直し、発信し、多くの人に新潟を訪れてもらうという試みで、未来のチカラプロジェクトと目指すところは同じだ。今後も連携を進めたい。
県北には地域ならではの農産物や水産物など、まだ知られていない魅力がたくさんある。地域がその魅力に気づき、磨き、付加価値を高めることで、未来に誇れる地域になることを期待している。 地域の価値や魅力を見詰め直し、誇りを持って発信することで、多くの人が地域を訪れて潤してくれるような状況をつくりたい。県の目指すところは「未来のチカラ」と同じであり、連携を進めたい。
未来のチカラというプロジェクトは2019年の春からスタートした。新聞社の力を全て結集して、いろいろな課題を抱えた地域に、記者たちだけでなく役員も実際に出向くという試み。住民に膝詰めで意見を聞き、地域の市町村長とのディスカッションを通じて、10年後の未来に輝く地域の姿を探りたい。
夏の長岡開催で新型コロナウイルスの影響を受け、デジタル環境を取り入れた新しい開催の在り方を突きつけられた。社会は元の形にはもう戻らないが、変革を進めていくチャンスと考えたい。開催はさらに、来年の春には県央、夏には柏崎、秋には佐渡と予定されており、地域をもっと元気にしたいという思いを大切に届けたい。