第4弾 県北

[未来のチカラ in 県北]

10年後さらに輝く地域へ
-提言フォーラム詳報-

提言フォーラム詳報 <2> パネルディスカッション

子どもたちに希望 誇りを

-1次産業発展へ向けた各市町村での取り組みや、住民提言への感想は。

高橋邦芳・村上市長
高橋邦芳・村上市長

高橋邦芳・村上市長
郷土愛の幾瀬が大切

 課題に切り込んだ見事な提言だ。1次産業は厳しい現状にあるが、市としても持続可能な産業として位置付けていくことに努め、いろいろな施策を展開している。

 漁業の担い手減少をチャンスと捉え、そこに伸びしろがあると思っている。コロナ禍でもあり、オンラインやふるさと応援寄付金を活用し、越後本ズワイなどの販売検討を進めている。提言にもあったが、地元のことを知って誇りにし未来へつなげていくには教育が欠かせない。子どもに豊かな人間性、郷土愛を育む大切さを強く感じている。

井畑明彦・胎内市長
井畑明彦・胎内市長

井畑明彦・胎内市長
農業と観光の連携へ

 貴重な提言だった。1次産業の後継者不足解消は難しい問題だが、いかに高品質、高付加価値な物をどう作るかにヒントはあり、6次産業化も求められる。胎内市では米粉をいろいろな製品に展開する営みを農業、加工の方々が担っている。

 地域に光を当てる視点を大切にするには、やはり食育などの教育をどんどんクローズアップするべきだ。地域づくりでは、農業と観光をリンクさせ、多くの人が訪れ体験し地域の価値を見い出してもらい、ファンを増やせば、新しい価値を育むことができる。

西脇道夫・聖籠町長
西脇道夫・聖籠町長

西脇道夫・聖籠町長
農地の基盤整備推進

 町内の農家数は30年で半減、兼業は7割減った。10年後にはかなりの兼業農家がリタイアすると思われ、引き受け手の問題が発生する。引き受けるにも人手や資金の不足、スマート農業をやるにも情報不足、資金問題もある。

 一方、基盤整備を進めている。整備した農地を誰が耕作するか、後継者をつくろうという動きが出てきたのは良いことだ。夢を語るなら、自宅からパソコンで農業ができる時代になれば、と期待したい。漁業は農業以上に後継者が厳しいが、マリンスポーツと連携した観光漁業を考えたい。

加藤弘・関川村長
加藤弘・関川村長

加藤弘・関川村長
集落存続へ意識転換

 今の農業は自分の子どもの時のような、きつい汚いの3K職場ではなく、むしろ自然に親しめる良い職場だと思うが、もうかる農業になっていないことが担い手不足の根本原因だ。今のままでは未来はないと思う。農地の集約を進めていかなければ、コストの低く生産性が高い農業はできない。

 村では65歳以上の農家が約70%。集落をどう守っていくか本気で考えねばならない時期だ。集落に入り話を聞くと、「俺の代は自分で耕作するんだ」と言われるが、その意識を変えていかねばならない。

本保健男・粟島浦村長
本保健男・粟島浦村長

本保健男・粟島浦村長
村職員の兼業認める

 漁業あっての島の観光。漁業を持続化するには上手に資源を確保しながら、地域の中で豊かに生活することだ。漁師は大変な労働や経費がかかる割りには、それに見合う代価を得られていない。離島のため、搬送する時に手数料などを取られるからだ。漁師たちが自分たちで値段を決められるようにすることが、漁業資源の持続化にもつながる。

 担い手不足の点では、昨年度から村職員の島内産業での兼業を認めている。週末や平日の夕方からは、観光を手伝ってもらっている。

二階堂馨・新発田市長
二階堂馨・新発田市長

二階堂馨・新発田市長
近隣と共に栄える

 入院中の二階堂馨・新発田市長からは、1次産業の発展や市町村連携について次のようなメッセージが寄せられた。

 五つの理想像のご提案は、競い合う地域の関係から、お互いに磨き合い、魅力を引き出し合うことを求められていると考えている。わがまちのみを考える「ワンカントリー」から、近隣と共に栄える「ワンエリア」へと考え方を転換する。まさに、そのキーワードは、連携を意味する「連」だ。10年後の未来に向け、阿賀北地域が「連」を合言葉に、新しい技術導入や販路開拓、人材育成などへと手を携えて取り組んでいきたいと思う。

-スマート農業にどのような将来像を描くか。

佐野隆之・胎内市農業士会会長
佐野隆之
胎内市農業士会会長

佐野隆之・胎内市農業士会会長
遊び心で新たな発想

 スマート農業の促進により、空き時間が増えると予測される。これにより、仕事の戦略を練ったり、遊んだり、自由な時間を確保できるようになる。世の中を変える発想は、遊び心から生まれることも多い。戦略も遊びも、集中して取り組むうちに、いつか仕事とマッチングするだろう。その意味で、スマート農業はとても大事だ。

-子どもに農業の大切さをどう伝えたらよいか。

中川千恵・胎内美人妻の会
中川千恵
胎内美人妻の会

中川千恵・胎内美人妻の会
食への興味を持って

 子どもたちには小さな頃から1次産業や食の大切さを伝えている。しかし、子どもが成長するにつれ、食への興味や関心が薄れるように感じる。学校では農業体験の授業があるが、勉強として捉えられ、興味を持って学ぶ機会として捉えられていないことが弱点。そのため、子どもたちが農業を学べる機会を地域全体で提供したい。

-就農人口を増やすにはどうすべきか。

髙崎美由貴・金助農業株式会社
髙崎美由貴
金助農業株式会社

髙崎美由貴・金助農業株式会社
就農や独立しやすく

 就農しやすく、独立しやすく、小さな頃から子どもたちが農業を身近に感じられるようにすることが大切だ。農業法人や既存農家が規模を拡大すれば、より多くの従業員を雇うことができる。新規参入者が将来的に独立できる仕組みも重要。子どもたちにとって、農家の手伝いが、特別なことではなく、当たり前になればうれしい。

-漁業の面白さはどのような点か。

髙橋修・粟島定置
髙橋修
粟島定置

髙橋修・粟島定置
漁業のライブ配信も

 食べた人から「おいしい」と言ってもらえるなど、感謝や共感を得られることに魅力を感じている。今後は、漁業の様子をライブ配信できたら面白いと思う。視聴者がその場で魚を注文したり、オンライン料理教室を開いたりする仕組みだ。共感してくれる仲間が増えれば、1次産業が盛り上がる。漁業の楽しさを発信したい。

-地元食材の魅力をどう周知させたらよいか。

関根暁子・長徳寺料理教室主宰
関根暁子
長徳寺料理教室主宰

関根暁子・長徳寺料理教室主宰
郷土料理受け継ごう

 寺では、洋風の精進料理を提供するなどし、食の大切さを再確認している。田舎の住民にとって、近くにある畑や海は財産。取れたての野菜や果物のおいしさを、家族や友人と分かち合ってほしい。また、郷土料理「のっぺ」には地域性がある。各地の特色を知り、地元の味を受け継ごうとすることが、誇りにつながるのではないか。

-食や地域の魅力をどう発信しているのか。

臥牛山朝猛・元力士、地域おこし協力隊
臥牛山朝猛
元力士、地域おこし協力隊

臥牛山朝猛・元力士、地域おこし協力隊
SNS投稿してみて

 普段から会員制交流サイト(SNS)での情報発信に努めている。ウイルス禍で、周囲から「インスタグラムの使い方を教えてほしい」との依頼も多い。日常生活の一部分を写真に収めて投稿するだけでも、地域の魅力発信につながる。冬を迎え、おいしい食材がたくさん出てくるので、皆さんもSNSへの投稿を楽しんでほしい。

-農漁業の発展には市町村間の連携も欠かせないが、その取り組みは。

高橋市長 耕作面積は、市単独で7330ヘクタールと膨大だ。その中で担い手をどう維持していくかが課題。特に稲作は連携をしなければならない分野だ。岩船産コシヒカリが特Aに復活した。市全体で作柄が少しずつ違うが、岩船産というブランドの中でやっている。ブランドを定着させ、どこの産地でも産出できることや、連携して新潟ブランドとしての位置付けをつくることが重要だ。

井畑市長 すぐにこういう連携があると見いだすことはたやすくないと思う。村上市だけでもかなりの面積があるように、消費者がどのくらい均一の品質を求めているかによって、連携できるところがあれば取り組むことになる。例えば、食材や食のイベントを一緒に企画して実行すれば、来訪者に多種多様な品物に興味を寄せてもらえる。消費者の視点を捉えながら連携できればいい。

西脇町長 まず、米農家にとって一番大きな問題となってきているもみ殻処理を、広域的に検討する必要がある。町は食の安全のため、有機堆肥を使おうとしているが、町内には酪農農家が2軒のみで厳しく、連携ができればありがたい。果物と観光のセットが必要だが、観光地が少ないため近隣自治体との連携を検討する必要がある。農地の基盤整備後に2割を園芸に充てた場合、販路が現実的な問題だ。広域的な連携が大きな課題になる。

加藤村長 新潟はおいしいものがあるが、量が確保できないと言われている。行政は市場に鈍感でマーケティングが弱い。市場に詳しい消費者や農協に作付けで音頭を取ってもらい、少量でも産地化できれば、所得の向上につながるのではないか。村は海が無いので、道の駅に魚が無い。県北のものは地元のものということで、無いところを補っていく連携もある。

本保村長 漁業の入札が島でできず、岩船や新潟で値段が付けられている。また生産者が市場をつかめていない。漁獲制限もあり、1匹の価値を大事に高値で売っていくことが必要になる。苦労して取った魚を高く売り込めるように連携したい。すでに弥彦村と連携して市場に魚を少し出しているが、関川村にも粟島の魚を出せるように話を詰めていきたい。

<パネリスト>
村上市  高橋邦芳市長
胎内市  井畑明彦市長
聖籠町  西脇道夫町長
関川村  加藤弘村長
粟島浦村 本保建男村長
胎内市  佐野隆之 胎内市農業士会会長
胎内市  中川千恵 胎内美人妻の会
聖籠町  髙崎美由貴 金助農業株式会社
粟島浦村 髙橋修  粟島定置
新発田市 関根暁子 長徳寺料理教室主宰
村上市  臥牛山朝猛 元力士、地域おこし協力隊
コーディネーター 間狩隆充・新潟日報新発田総局長

[未来のチカラ in 県北]
提言フォーラム詳報 <1> 市民からの提言