[未来のチカラ in 長岡・見附・小千谷]
長岡、見附、小千谷の3市の産業をさらに発展させるため、企業経営者や大学教授ら住民8人が提言をまとめた。メンバーを代表して見附商工会の滝澤正徳・経営支援室主査が発表し、「若者に向けた情報発信が必要だ。PRによって地域産業への誇りが芽生え、就職者の増加や地域活性化につながる」などと訴えた。
10年後に向けた提言を発表する見附商工会の滝澤正徳主査=8月10日、アオーレ長岡
8人は6月から3回、オンライン参加も含めて会合を開催。それぞれの立場から産業の強みや課題を話し合い、提言をまとめた。
長岡を中心とした工作機械、精密加工などの製造業については「高い技術を持った中小企業の知名度が低く、若者の就職先として選択されていない」と指摘。「IoTやAI時代を変革のチャンスと捉えて個々の技術のレベルアップを図り、連携や発信力を強化して地域全体でアピールしていくことが必要だ」と強調した。
見附、小千谷の繊維産業、伝統産業に関しては、ニットは独自ブランドの確立や認知度の向上、小千谷縮は夏でも涼しい快適さのPR、錦鯉は大量生産する中国との競合に負けない技術の継承などを、取り組むべきこととして列挙した。
各産業の魅力を伝える上で、教育機関や地域との連携、人材育成の大切さについても言及。製造工程を学生や住民に公開し、理解を深めてもらう「オープンファクトリー」の開催なども提案した。
地元の学生に向けたメッセージとして「首都圏の企業、大手メーカーを志向するのは当然だが、個人が活躍できる場が中小企業にはあり、世界で活躍することもできる」と呼び掛けた。
具体的な行動として、県内外の若者とオンラインでつなぎ、3市のものづくりを伝えるキャリアフォーラムを9月にも開催すると表明。この先の10年を次の10年のために手を打つべき時期と位置付け、「中越地震を乗り越えた私たちにはできる」と力強いメッセージで締めくくった。
<提言者>
栗井英大さん(長岡大教授)
宮下玲子さん(小林社長)
坂田政元さん(マックスニット社長)
片岡太郎さん(大家養殖場代表)
細貝信和さん(サンシン会長)
横山和輝さん(プロッセル社長)
滝澤正徳さん(見附商工会経営支援室主査)
髙橋直久さん(小千谷織物同業協同組合理事長)
県は、県民に自分たちの地域の魅力を改めて考えてもらい、積極的に表現してもらう環境づくりを進めている。新潟の魅力を考える懇談会を開催し、会員制交流サイト(SNS)を活用して発信する「新潟※(コメジルシ)プロジェクト」も始めた。
新潟日報社の「未来のチカラ」で今回の舞台となる地域には、見附ニットや小千谷縮などの伝統産業に加え、世界に誇る錦鯉の生産地がある。長岡には工作機械や金属加工の高度な技術を持つ企業が集まる。技術系の大学など「知」の拠点と有機的に結び付くことで10年後、さらに大きく発展することを期待したい。
地域の価値や魅力を見詰め直し、誇りを持って発信することで、多くの人が地域を訪れて潤してくれるような状況をつくりたい。県の目指すところは「未来のチカラ」と同じであり、連携を進めたい。
ビデオでメッセージを寄せた花角英世知事
「未来のチカラ」は新聞社が丸ごと地域に出掛け、地域の人々と膝詰めで話し合って課題と魅力を探るプロジェクトだ。大きな本県を九つの地域に分け、足かけ4年で全域を回る。
肝となるのは、住民によるワーキングチームに、どうすれば地域が良くなるかを議論してもらうことだ。皆さんが熱い思いを持っている。長岡、見附、小千谷の3市の産業について7月に紙面で紹介したが、さらにフォーラムで3市の人々と記者らが一緒に考えてきたことを話し合う。
新型コロナウイルス感染拡大後の開催は初めてとなる。「3密」を避けながら、どうしたら一体感を持って課題に立ち向かう勇気を持てるか。この状況だからこそのやり方を見つけたい。子どもたちが輝く姿や地域の魅力を紹介する動画を作り、ウェブを活用して発信するなど、ここから新たなスタートを切りたい。
小田敏三社長
「未来のチカラin長岡・見附・小千谷」では7月から、長岡の製造業、見附のニット、小千谷の錦鯉を主要テーマに「産業のまち」シリーズ3部作と、小千谷縮を紹介する企画を展開。地域の魅力を掘り下げ、新型コロナウイルス収束後を見据えた10年後のあるべき姿を探った。長岡支社報道部の石田篤志記者が報告した。
産業をテーマに展開した連載記事のパネル展示
連載「災禍越えるまち」では長岡に集積する多様な製造業を取り上げた。起業した若者の挑戦や、明治時代の東山油田開発にさかのぼる歴史、企業と大学、市が連携したイノベーション(技術革新)創出の動きを取材した。
「流行を編むまち」では、見附のニット業者がウイルス禍でも販路拡大に乗り出す姿や、地域経済をけん引してきた戦後の歩み、外国産に対抗する産地ブランド構築の挑戦を描いた。
「宝石が泳ぐまち」は錦鯉発祥の地・小千谷で、輸出の急減を受けてネット販売を始めた養鯉業者や、中越地震を乗り越えた産地の誇り、室内向けに小型の錦鯉をPRする動きを追った。
一方、長岡空襲から75年の節目を捉え、平潟神社など惨禍の記憶を伝える地を記者が巡り、空襲体験者から話を聞く連載を企画。動画を付け、未来を担う子どもたちへのメッセージも寄せてもらった。
観光や食などを切り口に9月末まで、3市の魅力を紹介していく。