上越市立水族博物館「うみがたり」は2019年6月26日、グランドオープンから丸1年を迎えた。24日現在の来館者は約90万人。開館の狙いとした県内外への市のPRや交流人口の拡大に大きく貢献しており、滑り出しは順調だ。一方、"開業特需"が一段落する2年目以降に向け、うみがたりはどのように集客力を確保していくのか。立地する直江津地区など、市全体への波及効果にはどのようなものがあったのか。船出から1年。うみがたりの取り組みと、まちの変化を探った。
大勢の来館者でにぎわいを見せるうみがたり=2019年6月23日、上越市五智2
仲良さそうによちよちと歩くマゼランペンギン。シロイルカの表情は何とも
1934年、現上越市に個人経営の水族館が開館してから80年余り。6代目の水族館として昨年に新たな装いとなって以降、うみがたりは同市の一大集客施設として抜群の存在感を誇っている。5代目の旧館の来館者数は開館した80年度にピークの約37万9千人で、新潟市水族館マリンピア日本海(中央区)が95年度に最多の約75万3千人。クラゲの展示種類数が世界一とされる山形県の鶴岡市立加茂水族館が2014年6月のリニューアルオープンからの1年間で約83万6千人だったことからも、うみがたりの人気の高さが分かる。
上越市は開館から最初の1年間の入り込みを約60万人と想定していた。市やうみがたり指定管理者の横浜八景島(横浜市)は予想を大きく上回る結果となったことについて、「オープン前の県内外への積極的なPRがうまくいった」と分析する。マゼランペンギンの飼育数は世界一で、国内5館目となったシロイルカの飼育展示は東京以北で初。口コミを通じても人気が浸透していった。
うみがたりが行った調査では、長野県を中心とした県外客が来館者全体の約半数を占めており、北陸や信州方面などからのアクセスのしやすさも入り込みにつながっているという。
加えて、うみがたりの桜健太郎館長(48)は「冬場の取り組みも人気を集めた」と強調する。通常は屋外で行われるバンドウイルカによるショーについて、11月から2月末まで屋内から水槽越しに楽しめる形式に変更。2月中旬からは、生物が水中で発する音を楽しめる特別展「おとがたり」を開催するなど、冬場の来館者数の落ち込みを最小限に抑えたことも全体の伸びにつながった。
一方、市の予測では2年目の入り込みは1年目比で約2割減、5年目は同約4割減となる見込みだ。桜館長は「1年目は新しい施設ということで大勢の人に来てもらったが、2年目以降は水族館本体の魅力をしっかり伝えていかないといけない」と話す。
そこでうみがたりでは、特別展などの企画を「2、3週間に1回程度」と切れ目なく行うことで、新規来館者やさらなるリピーターの確保につなげていきたい考えだ。今月中旬には、海洋ごみをテーマにした特別展「うみのごみ」をスタート。5年ごとに数億円規模のリニューアルを実施し、入り込み増を図る計画もある。
うみがたりから、市内各地への人の流れも生み出されつつある。