県央地域が10年後も輝いているためにはどうすればいいかという提言を、さまざまなかたちで地域振興に関わる住民8人がまとめた。県央を、ものづくりを中心に栄えてきた地域と定義し、産業発展が観光や圏域全体の活性化につながり、移住、交流人口が増え技術が伝承されていく社会を目指した。
<提言作成メンバー>
■三条市 斎藤和也 エキラボ帯織代表
■燕市 福田恭子 「MGNET」ディレクター
三条市 加藤はと子 道の駅・庭園の郷保内駅長
燕市 森山史朗 「ツバメクロスアクションズ」代表
加茂市 桑原隆 桐たんすメーカー「桐の蔵」3代目
加茂市 児玉あんず 雪椿まつりアンバサダー
田上町 森澤拓哉 地域おこし協力隊
弥彦村 白崎純也 旅館「みのや」17代目(当日欠席)
(■は提言発表メンバー)
県央地域が10年後も輝いているためにはどうすればいいかという提言を、さまざまなかたちで地域振興に関わる住民8人がまとめた。県央を、ものづくりを中心に栄えてきた地域と定義し、産業発展が観光や圏域全体の活性化につながり、移住、交流人口が増え技術が伝承されていく社会を目指した。
提言チームを代表し、三条市の斎藤和也さんと燕市の福田恭子さんが登壇した。
斎藤さんは、三条市のJR帯織駅で、会員になれば工作機械を使ってものづくりができる「エキラボ帯織」を有志で運営する。ものづくりの立場から、後継者不足や技術伝承について語った。
燕三条で人気の背脂ラーメンを例に挙げ、「工場で遅くまで働く人に、熱々のままラーメンが伸びないように届けようと工夫したのが始まり」と話し、「県央はものづくりをきっかけにいろんなドラマが生まれてきた地域」とする。ウイルス禍で影響を受ける事業所も多いが、「落ちた分、時勢に合わせた新製品を開発するなど、価値を変換させるしぶとさがある」と胸を張った。
一方で「製造業は、初期投資だけで5000万円はかかる。若者が思い立って起業できるものではない」と話す。技術習得にも経験が必要で、跡取りがおらず廃業せざるを得ない事業所もあるという。
こうした課題に対し「働く場所はたくさんあり、ここで技術を磨けば世界で闘える」と強調。学歴に関係なく「熱意があればオンリーワンの仕事ができる」ことを全国の若者にアピールし、「高卒者就職率ナンバーワン」を目指しては、と提案した。
技術習得の仕組みづくりや待遇改善、子どもがものづくりの面白さを体験できる場を増やすことなど、若者が県央で働きたいと思える環境整備を訴えた。
福田さんは、燕市の金属製品開発「MGNET(マグネット)」で、企業と地場の技術や職人をつなぐコーディネーターとして活躍する。新潟市出身で、「県央には面白い仕事やキラキラと活躍する大人もいるが、伝わっていない」と感じたという。
産業が発展し、地域全体に良い影響を与えるようになるには、まず住民や地域に関わる人が魅力を口にすることが重要と説く。加えて、ものづくりの現場と観光をつなぐコースづくりや、「お試しU・Iターン」などの取り組みにより、交流・関係人口を増やしたいとした。
「ものづくりの魅力発信や体験を通して、住民をはじめ地域に関わる全ての人が県央を誇り、外に発信していけば、若者が住み続けたいと思い、移住者も増える」と強調。好循環を生み出す地域になるとした。
所用で提言フォーラムを欠席した弥彦村の白崎純也さんからメッセージが寄せられた。
県央エリアは、ものづくりをはじめ自然や農業、観光、食など多岐にわたりポテンシャルを兼ね備えた類まれなる地域だ。
その中でも観光業は業種の垣根を越え、モノ、コト、人を繋ぎ合わせることにより、国内外から訪れる人々に情報発信や新しい体験を提供することができる。
10年後の県央がキラキラと輝けるように、私自身も垣根を越えて未来のチカラとなりたい。
-地域活性化のために取り組んでいる各市町村の施策や住民提言への感想は。
「高卒者の就職率ナンバーワン」という提言に興味を引かれた。三条市立大の1期生に県央地域で就職してもらいたい一方で、全ての企業が大卒を雇いたいわけではない。高卒も含めたアプローチを検討したい。ものづくりというと鍛冶などの伝統や技術の継承に重点を置いてきたが、市の製造品出荷額を上げる施策も打つことで、職場環境が改善し若者に魅力的な会社が増えると思う。
産業発展が地域発展の鍵で、担い手不足や魅力発信が課題というのは同感だ。力を入れているのが官民共同のインターンシップで、若者に1週間住んで地場企業に入ってもらう。素晴らしい技術を持って世界的に活躍している企業が多くある。大企業の歯車ではなく自分で商品を企画したり海外の見本市で営業したりできることを知ってもらい、就職に結び付けることを目指している。
市が支援するたんす祭りでは例年女性に桐たんす作りを体験してもらっていて、ウイルス禍の昨年は工房を巡ってもらう企画をした。ものづくりの現場や作り手の思いを知ることで、興味を持つ人が増える。燕三条は金属加工で、加茂は桐たんすやびょうぶ、建具。それぞれの土地の歴史があって今につながっていると知ってほしいし、ものづくりが若い人の自己表現の場になるといい。
ウイルス禍で地方回帰がいわれるようになり、暮らし方を見直したい人が移住してくれればこの地域は必ず元気になれる。町には消雪パイプや鉄道車両の部品など特殊な技術を持った企業が多い。宇宙産業に取り組んでいる企業もあり、素晴らしい企業が地元にあることを小中学生の時から認識してもらうことが大事だ。東京に出て行った人が戻ってきてくれるような地域を目指したい。
従来の発想の延長線だけではいけない。将来、農村地帯で人口ゼロ集落を出さないために、農家の手取り収入を上げたい。コシヒカリだと10アール当たり大体15万円の手取りが、枝豆だと30万円、ブドウならよくできれば60万円になる。常識にとらわれ、反対を恐れてやめてしまっては進歩がない。若い人たちには「お前たち何やってんだ」というくらいに思い切ってやってほしい。