第5弾 県央

提言フォーラム詳報【2】 ディスカッション

地域と人をつなぐ

ディスカッション「官民連携」

森山史朗さん
森山史朗さん

森山史朗・ツバメクロスアクションズ代表

縦割り行政なくして

森山さん 燕市で食に関わる企画のプロデュースや情報発信に取り組む団体「ツバメクロスアクションズ」を立ち上げた。新しい事業を始める時に痛感したのが縦割り行政の壁。各課に同じ説明に回り、調整に1カ月もかかって悔しかった。市長と話したくても在室中か分からず、市長室が透明だといいと感じた。

 

鈴木市長 縦割りの排除はトップの仕事の一つであり、目的が明確で一生懸命な民間団体と行政が連携するのは大切なこと。ただ、行政としては公平性や平等性の観点から事業を進める。立ち上がり段階の団体や事業に市の資源や税金を使っていいのかは悩みどころだ。森山さんの団体が実績を重ねた今なら、連携もスムーズだろう。
市長室の前には本年度、広報秘書課を新設し、声を掛けやすくなった。これからも実績を重ねてほしい。燕市、ひいては県央のためになる活動を応援したい。

滝沢市長 市では縦割り解消と情報共有を目的に、職員がリアルタイムでやりとりできるチャット機能を導入し、部署をまたぐ連携が進んでいる。市長室の透明化は設備上難しいが、手紙やメールで意見を寄せてほしい。

藤田市長 縦割り行政はまさに課題だ。市民から「市政に関わりたいが、つながり方が分からない」といった共通の声も上がる。どの部署にも入り込める組織があれば、市民がもっと市政に参加できるのでは。そうした組織を新設し、縦割り解消を目指したい。

森澤拓哉さん
森澤拓哉さん

森澤拓哉・地域おこし協力隊

首長の視点知りたい

森澤さん 田上町で地域おこし協力隊を務め、地域をどう活性化できるか自分なりに考えながら取り組んできた。この場を借り、市町村長という立場だからこそ見える課題を聞かせてもらえないか。活動の参考にしたい。

 

滝沢市長 最初から「行政に何かしてほしい」「補助金ありき」という受け身姿勢でなく、市民の皆さんからどんどんアイデアを出してほしい。本当に現場のニーズを知るのは地域に住む市民だからだ。

藤田市長 市の取り組みが市民に十分伝わっていないと思うことがある。このフォーラムの参加者は「情報を取りに行こう」という人が多いだろうが、市役所を「敷居が高い」と感じている人も。どうしたら市政を身近に感じてもらえるか、日々考えている。

ディスカッション「広域連携」

桑原隆さん
桑原隆さん

桑原隆・桐たんすメーカー「桐の蔵」3代目

産業核に循環観光を

桑原さん インターネットで加茂市の桐たんすを知って全国から客が来る。その際、JR燕三条駅、北陸道三条燕インターチェンジを利用し、おしゃれなカフェができるなどして最近にぎわいを増す加茂市の商店街を散策し、湯田上温泉に行くケースも多い。「伝統産業観光」の切り口で、加茂市も県央の循環観光に加われるのではないか。三条、燕のものづくり、田上、弥彦の温泉地と結び付けたやり方を模索していきたい。

 

藤田市長 加茂市には宿泊施設が少なく、人を呼び込んでも泊ってもらう場所がない。そういった場合は田上町の湯田上温泉に泊ってもらうことになる。「田上町に取られてしまった」と思うのではなく、加茂市、田上町の双方を知ってもらう機会と捉え、互いのいいところを生かして相乗効果を生み出せるといい。
加茂市、田上町だけではなく、県央各市町村はそれぞれ特徴を持っている。「取り合い」という考え方ではなく、それぞれが良さを生かし一緒になることで、互いにプラスになる。こういった関係、循環の流れを築きたい。

佐野町長 観光面で見ると提言の中にもあった、工場でものづくりの作業を見学するツアーは非常にいいことだ。ある工場で作った部品をさらに別の工場で加工を加えていくという「サプライチェーン」の流れを見ることができるツアーをやってみるのもいいかもしれない。ものづくりの面白さが伝わるはずだ。
また、県央5市町村をスタンプラリーのように回っていくことで循環を生み出すのも大切だ。田上町では昨年10月に道の駅ができた。道の駅保内の加藤はと子さんにも指導していただき、多くの人に来てもらえる施設になった。道の駅を活用したツアーを考えても面白い。観光客の循環が生まれるのではないかと期待している。

小林村長 弥彦村が力を入れている枝豆について、今年8月には共同選果場を操業する。その次には急速冷凍工場を造る。それにより取れたての枝豆の鮮度を2週間保てる。ふるさと納税の返礼品として考えているが、先に見据えているのは海外だ。
弥彦村を含む県央、本県の枝豆は私の知る限り日本で一番おいしい。いいものは必ず売れると確信している。ただ、世界を相手に弥彦村だけではできない。県央が一緒になってやっていければいい。

ディスカッション「心理的連携」

加藤はと子さん
加藤はと子さん

加藤はと子・道の駅 庭園の郷保内駅長

道の駅で情報共有を

加藤さん 道の駅は外から来る人の「ゲートウエイ」。地域には道の駅が五つあり、弥彦にはおもてなし広場、加茂には土産物センターがある。それぞれが観光パンフレットを置き合う連携にとどまっているが、移住や就業支援の情報発信なども全ての施設でやっていくことができれば。田上で弥彦の就職、加茂で燕での移住といったように紹介し合えれば、もっと活発に交流ができるので、実現させていきたい。

 

滝沢市長 福島県と下田地区を結ぶ国道289号八十里越道路が、あと5年程度で開通する。福島や北関東から県央地域への玄関口となる。行政の枠を超えた広域観光の議論が必要だ。

鈴木市長 2023年度に開院が見込まれる県央基幹病院の整備は、5市町村連携のモデルケースになった。今後も観光など、大きなテーマを見つけて、議論を深めていくことになる。

児玉あんず
児玉あんず

児玉あんず・雪椿まつりアンバサダー

県央発展へ一致団結

児玉さん 私は加茂に住んでいるが、ツバメクロスアクションズと協力して、メタル丼や背脂麻婆麺をオンラインで全国に紹介した。燕に詳しくなり、好きになることができた。外からは「燕三条」と一体の地域だと思われているが、中に住んでいると「燕と三条はバチバチしているよね」といった声も聞こえる。県央地域を盛り上げていくためにも、全体で協力できる態勢をつくっていくことが重要だ。

 

滝沢市長 燕と三条のバチバチについては、県央地域には高校の先輩の首長もいて、いい関係が築けていると思っている。半分冗談になっているとは思うが、気にせずに県央地域として連携を進めていきたい。

鈴木市長 誤解を恐れずに言えば、バチバチというのが地域の活性化につながっている。無くなればかえって地域の魅力が失われるかもしれない。ライバルとして競い合っていくことが全体の発展につながっていく。

藤田市長 今日はものづくりが切り口だったが、それが日常の生活や食、文化に根付き、観光や食につながっていく。直接ものづくりに関わる人たちだけではなく、全ての人に関わることだと強く感じた。県央地域の首長の関係については、今ほど連携が取れている時はないのではないかと感じている。行政に関わりたいと思っているなら、地域の皆さんにとっては今がチャンス。

<パネリスト>
(提言作成メンバー)
三条市 斎藤和也  エキラボ帯織代表
三条市 加藤はと子 道の駅・庭園の郷保内駅長
燕市  福田恭子 「MGNET」ディレクター
燕市  森山史朗 「ツバメクロスアクションズ」代表
加茂市 桑原隆   桐たんすメーカー「桐の蔵」3代目
加茂市 児玉あんず 雪椿まつりアンバサダー
田上町 森澤拓哉  地域おこし協力隊
弥彦村 白崎純也  旅館「みのや」17代目(当日欠席)

(5市町村長)
三条市 滝沢亮市長
燕市  鈴木力市長
加茂市 藤田明美市長
田上町 佐野恒雄町長
弥彦村 小林豊彦村長

コーディネーター 渡部麻里子・新潟日報三条総局長

[未来のチカラin県央]
提言フォーラム詳報【1】 市民からの提言

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