第6弾 柏崎・出雲崎・刈羽

水球のまち柏崎を「見たい」

新潟日報 2021/07/14

 新潟日報社が展開する地域応援プロジェクト「未来のチカラin柏崎・出雲崎・刈羽」のキャンペーン企画「たいが50」では、3市町村から推薦してもらった地域の宝を紹介します。第1弾「体験したい」に続く第2弾は「見たい」と思う宝物。その中から「水球のまち柏崎」を取り上げます。開幕が迫る東京五輪では、ブルボンウォーターポロクラブ柏崎(ブルボンKZ)の4人が水球代表の座をつかみ、1人が審判員に選ばれました。元日本代表主将でブルボンKZの強化部長を務め、柏崎市水球のまち推進室に勤務する永田敏さん(40)に、観戦のポイントや代表選手の持ち味を聞きました。「水球のまち」に至った経緯や、代表選手のプロフィルも紹介します。

水の中激しい駆け引き 日本代表 速攻に活路

ブルボンKZ強化部長永田敏さん 観戦のポイントを解説

藤井恵介さん

-水球の試合を楽しむポイントを教えてください。

 「試合が動く一番のポイントは、重い反則行為があった選手が一定時間プレーできなくなる『退水』の時だ。攻撃側はそこで点を取りたい。守備側はピンチだが、しのぐことができれば流れが来ることもある」

 「ゴール前の位置取りなどで、いかに相手の退水を誘発できるか。そこの駆け引きは面白い」

 「身長2メートルを超える選手もいる。その中で繰り広げられる激しい攻防、激しいプレーが見どころだ」

-水球選手は足が着かないプールでプレーします。

 「常に足を動かして浮きながら、ボールを扱う。いろいろな運動要素が入っているものすごくタフなスポーツ。欧州では『キングオブスポーツ』とも言われている」

-東京五輪の日本代表チームにはどのような特徴がありますか。

 「他国の代表と比較すると、男女ともに体格が小さい。しかし、泳力と持久力は勝っている。パワーや高さでは負けるので、速攻で点を取りにいく」

-総当たりで行われる予選リーグの展望は。

 「男子は初戦の米国戦が鍵になる。2勝すれば予選突破の可能性がある。米国と南アフリカ戦で2勝したい」

 「初出場の女子は、難しい戦いになりそうだ。チーム力は悪くはないので、中国には勝ちたい」

-ブルボンKZから五輪代表に選ばれた選手と審判員の持ち味を教えてください。

 「志水祐介選手(32)は攻撃力があり、相手ゴール前で攻撃の起点となる。前回のリオデジャネイロ五輪を経験している精神的な柱だ」

 「ゴールキーパーの棚村克行選手(31)もリオ五輪を経験している。ゴールを離れ、積極的に前に出るプレーが持ち味。反応も早い」

 「稲場悠介選手(21)は日本のエースで得点に期待。得点王も狙える。打点の高い豪快なシュートや、ミドルシュートに注目」

 「小出未来選手(29)は志水選手と同じ相手ゴール前のポジションで、力強いプレーとシュート力が特長。攻撃の要となる選手」

 「津崎明日美審判員(32)は場数を踏んでおり、公平な判断ができる。五輪の審判員に選ばれたのは快挙だ」

-東京五輪に選手、審判員を送り込む意義をどう捉えていますか。

 「柏崎の水球クラブチーム、ブルボンKZを多くの人に知ってもらえる機会になる。競技で結果を出すこと以外にも、子ども向けの出前授業といった地域に貢献できるような取り組みを進めたい」

-水球を始めたい子どもにどのように案内しますか。

 「泳ぎが苦手でも大丈夫。底に足が着くプールでの無料体験も実施しているし、練習見学もできる。面白そうだなと思ったら、ブルボンKZの事務局に連絡してほしい」

-市民や県民にメッセージはありますか。

 「選手はどんな状況でも全力を尽くすと思う。可能な範囲で応援してほしい。必ず選手の力になる」

<ながた・さとし> 1981年生まれ、福岡県出身。筑波大を卒業し、スペインの水球クラブなどを経て、2010年のブルボンKZ設立時から加入。14年に柏崎市職員となった。19年に現役を引退し、21年にブルボンKZの強化部長に就任。日本代表では09、10年に主将を務めた。

柏崎はなぜ「水球のまち」に?

1巡目新潟国体 会場に選出 チーム誕生

 柏崎市はいかにして「水球のまち」となったのか。きっかけは、1964年の1巡目新潟国体で同市が水球会場に選ばれた約半世紀前にさかのぼる。

 当時、柏崎に水球チームはなかった。地元の水泳関係者らは市内中学校の水泳選手を柏崎高校に入学させ、62年に水球チームが誕生。東京教育大(現筑波大)水球部で主将を務めた故内田力さんが指導者となり、地元開催の国体制覇を目指して選手を一から鍛え上げた。

 新潟国体の春季大会が行われた直後の64年6月16日、新潟地震が発生。水球を含む夏季大会の水泳競技は中止に追い込まれた。

 地元国体制覇の夢はついえたが、柏崎高は同年8月のインターハイで初優勝。翌65年も優勝して連覇を果たし、全国トップクラスの実力を証明した。優勝メンバーの一人、故矢島秀三さんは68年メキシコ五輪、72年ミュンヘン五輪に出場した。

 成績が低迷した時期もあったが、柏崎で水球の取り組みが途絶えたことはなかった。91年にはジュニアチームが発足。矢島氏も帰郷し、市内の新潟産業大で後進を指導した。

 「幻の国体」から45年後の2009年、柏崎市は2巡目新潟国体で再び水球会場に選ばれた。選手、監督ら全員が同市出身の少年男子チームは28年ぶりに4強入りを果たし、「お家芸」復活を印象付けた。

 翌10年、新潟産業大学長だった故広川俊男さん、海外でも活躍した日本水球の第一人者で、広川さんに誘われ柏崎市に移った青栁勧さんの2人が中心となり、市内に社会人水球チーム「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎(ブルボンKZ)」を発足させた。

 ブルボンKZ男子は12、18年の日本選手権で優勝。16年のリオデジャネイロ五輪、ことしの東京五輪ではそれぞれ選手4人を日本代表に送り出した。

 選手11人で発足したブルボンKZは現在、小学生から社会人までの選手とスタッフ総勢200人弱を抱える、国内最大の水球チームに成長した。

 柏崎市も水球をまちづくりに生かそうと17年、「水球のまち推進室」を新設。国際交流に力を入れ、東京五輪では水球強豪国のモンテネグロ、セルビアの事前合宿を誘致した。

ブルボンKZの設立発表会=2010年8月、柏崎市の市民プラザ

東京五輪に代表4選手と審判員

志水祐介選手

志水祐介選手

<しみず・ゆうすけ> 1988年生まれ、熊本県出身。筑波大卒。2016年リオデジャネイロ五輪代表主将。左肩の大けがを乗り越え復活した代表最年長の大黒柱。

棚村克行選手

棚村克行選手

<たなむら・かつゆき> 1989年生まれ、東京都出身。筑波大卒。2016年リオデジャネイロ五輪代表。前への飛び出しなど攻撃的なプレーが持ち味の守護神。

稲場悠介選手

稲場悠介選手

<いなば・ゆうすけ> 2000年生まれ、富山県出身。新潟産業大3年。海外で活躍し、ワールドリーグでは3大会連続得点王に輝いた。日本水球界が誇る若き逸材。

小出未来選手

小出未来選手

<こいで・みく> 1992年生まれ、千葉県出身。新潟産業大卒。ブルボンKZの女子選手として初めて日本代表に選ばれた。体の強さを生かしたプレーが持ち味。

津崎明日美審判員

津崎明日美審判員

<つざき・あすみ> 1989年生まれ、熊本県出身。日体大卒。ブルボンKZの15歳以下女子チームを指導する傍ら、国際水泳連盟の登録審判員として世界で活躍。

ルール:1ピリオド8分を4回 重い反則で20秒の退水

 水球は「水中の格闘技」とも呼ばれる激しい攻防が見どころの一つ。水深2メートル以上のプールで、選手は試合中一度も底に足を着かず、ゴールにボールを入れ合って得点を競う。ルールはハンドボールに似ている部分が多い。

 ゴールキーパーを含む1チーム7人。試合は1ピリオド8分を計4回行う。キーパー以外は両手でボールを扱ってはならない。ボールを獲得してから30秒以内にシュートできないと攻撃権が相手に移るため、華麗なパスワークとスピーディーな試合展開が見られる。

 ファウル(反則)は軽い反則、重い反則の2種類がある。重い反則をすると、選手は自陣ゴール横の「退水ゾーン」で20秒間の待機を命じられる。その間、相手チームよりも1人少ない状態での守備を強いられるため、退水時の攻防が勝敗の鍵を握る。

 自陣ゴール前で重い反則をした場合は、相手にペナルティースローが与えられる。

 選手が全身の力を込めて放つシュートは、男子で時速70キロ、女子で50キロを超える。豪快なシュートシーンは必見だ。

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