第6弾 柏崎・出雲崎・刈羽

「食べたい」柏崎の味

新潟日報 2021/07/21

 柏崎市と出雲崎町、刈羽村の魅力や宝物を発信する新潟日報社のプロジェクト「未来のチカラ in 柏崎・出雲崎・刈羽」のキャンペーン企画「たいが50」で、3市町村から推薦してもらった地域の宝物を紹介します。「体験したい」「見たい」に続く最後の第3弾は「食べたい」。甘みとうまみが強い柏崎市の認証米コシヒカリ「米山プリンセス」の生産者に話を聞きました。また廃校を活用した施設「ふるさと食堂 喜楽来きらら」では、地域の農産物を使ったメニューが人気となっています。住民が手掛ける地産地消や地域活性化の取り組みについて伺いました。

管理徹底 基準満たす 大粒 甘みとうまみ凝縮

認証米「米山プリンセス」を生産・重野貴明さん

 ブランド米の産地間競争に対応するため、柏崎市が2018年産米から導入した認証米コシヒカリ「米山プリンセス」。厳しい基準を満たしたコメは粒が大きく、甘みとうまみが強いことが特徴だ。

 認証基準は厳しく、制度ができてから3年連続で認証を受ける生産者は2人だけ。そのうちの一人、柏崎市北条で営農する重野農産の代表、重野貴明さん(44)は「米山プリンセスの生産は『挑戦』の気持ちで臨んでいる。柏崎のおいしいコメを流通させたい」と語る。

稲の成長を確認する重野貴明さん=柏崎市北条

 柏崎農業高校(現柏崎総合高校)を卒業後、群馬県の専門学校で自動車整備士の資格を取得。35歳まで整備士として市内外で働いていたが、コメ作りに奮闘する父の姿を見て、「おいしいコメづくりを引き継ぎたい」と就農を決意した。

 約4ヘクタールの水田でコシヒカリを栽培する。昨年収穫した約18トンのうち、約1トンが米山プリンセスとして認証された。プレミアム米だ。

 「父がいい土壌作りをしていたからこそ、甘みと粘りの強いおいしいコメになる」と語る。さらに北条地区のきれいで豊富な水がコメの品質を上げている。

 「専業農家として稼ぐために、良い値で売りたい」と、JAなどを介さない直接販売にこだわる。

 現在は収穫したコシヒカリと新之助のほとんどを、市のふるさと納税の返礼品に回すか、インターネットで販売する。プラスチックのボトルに入れて販売するなどユニークな取り組みも進める。

 米山プリンセスの栽培に取り組んだのは「自分の作るコメの評価を知りたい」と思ったことがきっかけだった。特に重視するのは「稲を寝かせないこと」。稲穂が垂れて土につくと、稲穂に光が届かなくなり、田んぼの水や稲の間の空気の通りも悪くなる。

 ジレンマもある。倒れない太い茎の稲にするために肥料をたくさん与えると、タンパク質含有率の基準を達成できなくなる。

 「認証基準のどれかを重視すると、どれかを満たさなくなってしまう」と難しさを話す。田植え後、稲の色や育ち具合に目を凝らし、肥料を与えるタイミングに細心の注意を払う。

 特に栽培が大変だったのは、2年目の19年だった。猛暑の影響で、県内の1等米比率は過去最低に近い水準だった。

 「自然と向き合い、管理を徹底することで、基準をギリギリで満たすことができた」と安堵あんどした。

 3年連続で認証を受け、コメ作りに自信がついた。「おいしさはどこにも負けない。今後も継続して認証を受けたい」と意気込む。

<米山プリンセス> 柏崎市が2018年産米から導入したコシヒカリの認証制度。1等米で、機械判定の食味値が85点以上、食味に影響するというタンパク質の含有率が6.0%以下、前年秋に有機100%肥料や堆肥をすき込んだ良質な土壌で栽培する-など厳しい基準がある。市によると、初年度に取り組んだ16生産者のうち、認証されたのは3生産者のみで、認証量は1950キロにとどまった。20年産は5生産者が生産した7560キロが認証され、いずれも過去最多となった。柏崎市田中のJA柏崎直売所「愛菜館」、東京都中央区のアンテナショップ「ブリッジにいがた」などで取り扱う。

旧別俣小の「ふるさと食堂 喜楽来」

地場産の食材 お重にぎっしり 食堂は教務室 校舎巡りも

 お重のふたを開けると野菜の天ぷら、ゼンマイ煮、肉じゃがなどがたっぷり盛られている。ご飯は地元のはさ掛けのコシヒカリ。柏崎市久米くんめにある旧別俣小学校内の「ふるさと食堂 喜楽来」では、地元の野菜をふんだんに使った料理を味わえる。代表の長井和子さん(68)は「スペースがあると詰めたくて、どんどん量が多くなった」と笑う。

 旧別俣小は市内で唯一残った木造校舎だったが、2005年に閉校。住民でつくる「別俣農村工房」が地域交流の場にしようと、11年に喜楽来をオープンした。

地域住民が大切に活用している木造の旧別俣小学校

 食堂は昔の教務室を使っている。メニューは日替わり定食(900円)とカレー(600円)の2種類。校舎内はほぼ閉校当時のままの状態で料理を待つ間に巡ることもできる。

 お重に入った定食は、野菜がごろっと大きく、食べ応え十分。こうじから育てて仕込むみそを使ったみそ汁は優しい味だ。窓からは校庭が見え、水田の緑もまぶしい。

地場産野菜たっぷりの日替わり定食。料理を運ぶ台車も旧別俣小で給食時に使っていたものだ=柏崎市久米

 料理は給食調理場で手作りする。メンバーが新鮮な野菜を突然持ち込むこともあり、急きょ献立を変えて提供する。調理担当の池嶋トシヱさん(75)は「手間はかかるが昔の味を求めて来てくれる人がいるとうれしい」と話す。

 別俣のキャッチフレーズは「みんなのふるさと」。長井さんは「ここには田舎の料理も景色もある。ふるさとを味わいたい人の受け皿になりたい」とほほ笑んだ。

■喜楽来
営業日:毎月第2、4土曜日とその翌日
時間: 11:00~14:00
問い合わせ: 090-6703-4001

※情報は掲載当時のもの

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