人口減少と高齢化に歯止めが掛からない佐渡。厳しい現実を受け止めつつ、「持続可能な島」を次世代に受け継ぐための模索が続いている。島内で展開されているさまざまな取り組みの現状を探った。
不動産仲介業「リライフ」(東京)は2019年、物件のデータ入力などを行う「佐渡データ管理センター」を佐渡市内に置いた。佐渡市に拠点を置く経営者らでつくる団体「NEXT佐渡」の誘致を受けた。
同社によると、データ入力などの業務を一元化することで、店舗の営業力強化などにつながるという。佐渡への進出について、鈴木卓人社長(38)は「補助金制度など行政の支援があり、佐渡での雇用拡大にも寄与できる」と強調する。
同センターでは、豊島史章課長(37)を中心に、佐渡在住のスタッフ9人が業務に当たる。豊島課長は「離島というハンディはあるが、佐渡での仕事や生活での不便は感じない」と語る。
佐渡市は、最上位計画として総合計画の策定を進めており、基本理念に「持続可能な島」を掲げる方針だ。生産年齢人口(15~64歳)を中心に、多様な人材の受け入れや働き口を増やす施策に注力する。NEXT佐渡などと連携して企業誘致を進める。
多様な人材を確保するため、市は市営住宅などを改修し移住希望者に貸し出す「お試し住宅」も、15年度から行っている。畑野、羽茂など4地区に整備し、最大半年間まで利用できる。移住に対するハードルを下げる狙いがある。
市によると、お試し住宅は9月末現在で57組79人が利用し、29組43人が佐渡に定住。21年度は、集落から推薦された空き家をお試し住宅として活用する取り組みも始まった。現在、市内3集落で進めている。
市移住交流推進課の渡邉一哉課長は「島で暮らす価値を見いだし、持続可能な島づくりにつなげたい」と話す。
移住定住の促進と並行し、多様な人材が佐渡で活躍できるため、働く場の確保や起業に向けた環境の整備も進めている。
島内での起業や創業を支援するため、市はその拠点施設となる「インキュベーションセンター」を、佐和田地区の河原田本町商店街にある古民家を改装して設ける。オフィスなどを置き、事務所の家賃などの初期投資を抑える環境を整えて、起業家を呼び込みたい考えだ。民間のインキュベーションセンターの開設も支援する。
起業家を呼び込むことについて、河原田本町商店街協同組合の林
リライフの「佐渡データ管理センター」のオフィス。和やかな雰囲気で業務に当たっている=佐渡市泉