第7弾 佐渡

持続可能な島へ 島内の取り組み

新潟日報 2021/10/07

<下> エネルギー

火力依存 脱却を図る 官民が太陽光浸透に注力

 佐渡市の男性(61)は5年ほど前、自宅の屋根に太陽光発電パネルを取り付けた。補助金を活用し、費用は約110万円。高額だったが、売電などにより10年ほどで元は取れると踏んだ。

 エネルギー問題には以前から関心があった。「化石燃料に頼らず、エネルギーで自立できる島になってほしい。佐渡が離島のモデルになれば」。男性はその実現に少しでも貢献したいと考えている。

 本土の発電施設とつながっていない離島は、電力の需給調整を島内で完結しなければならない。佐渡も例外ではない。佐渡の電力供給力の割合は、出力を調整しやすい火力発電が95%ほどを占める。その火力発電は、海上輸送による化石燃料がベースになっている。

 化石燃料に頼らない持続可能な島をつくるため、火力依存からどう脱却を図るか。島内の関係者らの間では近年、電力供給についての関心が高まっている。

 例えば行政側。佐渡市は2023年度完成予定の新市庁舎に太陽光発電パネルと蓄電池を取り付けるなど、取り組みを強める予定だ。「トキとの共生を掲げる環境の島として、エネルギーの自給自足に取り組まないといけない。それが移住希望者らに向けた佐渡の魅力発信にもつながる」と渡辺竜五市長は力を込める。

 県は、長期ビジョンを打ち出した。佐渡島と粟島での再生可能エネルギー導入促進を目指す「自然エネルギーの島構想」の中間とりまとめを3月に発表。太陽光パネルの普及などを進め、50年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを目指す。

 県と包括連携協定を結ぶ東北電力のグループ会社「東北電力ネットワーク」も10月5日、構想の一環で佐渡市栗野江に1500キロワット規模の太陽光発電施設の建設などを打ち出した。

 一連の動きにトキや環境保護の取り組みを続けている関係者からは歓迎の声が上がる。佐渡生きもの語り研究所理事長の仲川純子さん(65)は「課題は多いと思うが、取り組みを進めて環境の島と胸を張って言えるようになりたい」と語る。ただ現状、火力依存で一般島民の生活に影響が出るような切迫した状況ではない。市議会では「(市などの考えが)浸透していない」との指摘も出た。

 鍵になりそうなのが、東北電の別のグループ会社が先月始めたサービスだ。屋根上のスペースを提供することにより、初期費用なしで太陽光発電システムと蓄電池を設置できる。「自然エネルギーの島構想」の先導的プロジェクトとして位置づけられている。市はサービス利用者への補助も検討している。

 渡辺市長は「持続可能な島をつくるために、さまざまな取り組みをどう広げるかが重要な課題だ」と語った。

佐渡での再生可能エネルギー活用の取り組みを発表する東北電力ネットワークの関係者。島内の持続可能なエネルギーの在り方について行政や民間で模索が続いている=2021年10月5日、新潟市中央区

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